2014 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯アフリカのアブラヤシを基幹とした二次的植生が支える生物多様性と農業多様性
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25300012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山越 言 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00314253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20232382)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有用植物 / 野生動物 / 環境政策 / 生態学 / 自然資源管理 / アグロフォレストリー / 国際研究者交流 / ギニア:リベリア:タンザニア:ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
二次的自然景観の保全は、農業多様性と生物多様性双方にとって有益であり、高い現代的重要性を持つ。2014年度、本研究課題では、アフリカの東西におけるアブラヤシの自然分布の多様性について、歴史的背景と現代の人々の土地利用との関連に注目して、以下のような活動を行った。 主調査地であるギニア共和国南部森林地域、とくに世界自然遺産ニンバ山周辺の生態系および農業景観についての現地調査、航空写真、衛星写真の精査、アブラヤシの生息状況の概要を把握する広域調査および食用ヤシ油の生産・流通状況調査は、同地でのエボラ出血熱の流行により、現地調査はおろか、首都での航空写真収集さえままならぬ事態となり、次年度以降に延期せざるを得なかった。また、研究協力者による隣国リベリアでの比較調査も、同様の理由から延期した。 アフリカ大陸の東西にわたるアブラヤシの生息状況や利用を把握するため、研究分担者、研究協力者がタンザニア内陸部および島嶼部において広域調査を行った。降水量、乾期の長さといった環境条件に加え、人々による管理や利用方法の違いによる、二次的植生の中でのアブラヤシの地位の多様性について知見を深めた。また、研究協力者が、タンザニア、タンガニーカ地域の国立公園周辺の農村において、アブラヤシの生息状況調査と野生動物によるアブラヤシの利用について、センサーカメラを用いた生態学的調査を進めた。また、同地の人々によるアブラヤシの採油方法について民族誌的調査を行い、西アフリカとは異なる採油器具の伝播や採油方法の多様性について重要な知見を得た。 研究代表者は8月にベトナムで開催された国際霊長類学会に出席し、情報収集を行うとともに研究成果について発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行った文献渉猟から、アフリカ大陸内でのアブラヤシ分布の多様性については、近年の遺伝学的研究の情報から、これまでの観察によるものと異なる伝播経路が示唆されている。結果、これまでさほど注目していなかったマダガスカル島での調査の重要性が浮上した。同地域については研究代表者の所属組織に厚い研究蓄積と人的資源があり、今後の予備調査についての可能性が開けた。 タンザニアにおけるフィールド調査に進展により、野生動物と人々の同種の利用に関して西アフリカとの生態学的、文化的違いが明らかになりつつあり、この方面で大きな進展を得たといえる。 いっぽう、主調査地のギニア共和国及びその周辺国における調査は、2014年3月にWHOによって認定されたエボラ出血熱の歴史的大流行により、現実的に現地訪問が不可能となった。このため、2014年度中はすでに得ていたデータの分析等に注力したが、2015年度以降のエボラ熱の収束状況次第では、この地域での調査が大きく遅れる可能性がある。 以上、現時点では、ギニアでの調査の遅れはあるが、東アフリカでの広域調査の進展により、全体としては順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、初年度に進展したGISによるアブラヤシの生息状況およびそれに影響を与えた人口増や焼畑の強度に関する検証に関して、ギニア首都コナクリでの1980年代の航空写真入手のための渡航が可能になるのを待ちながら、すでに利用可能な1960年代、2010年代の航空写真・衛星写真の比較分析を先に進める。 重要な調査地として浮上したマダガスカル島のアブラヤシに関する文献調査を進め、必要に応じて研究協力者による現地調査を行う。 タンザニア農村での野生動物によるアブラヤシ利用調査と人々によるアブラヤシ利用の調査を継続し、対応する西アフリカの動物生態学、民族誌的資料との対比を行い、アフリカ大陸全体での伝播史との対応を検討する。 ギニア及び周辺国での調査については、エボラ出血熱の収束を待って、WHOによる安全宣言が出たのちに速やかに現地調査を再開する。
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Causes of Carryover |
エボラ出血熱の流行により、調査対象地のひとつであるギニア共和国での現地調査が不可能になり、当該調査計画を次年度に遅らせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点でエボラ出血熱の収束について予想が立たないが、年度後半のギニア現地調査を見込んでいる。その調査のために次年度使用額を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)