2015 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯アフリカのアブラヤシを基幹とした二次的植生が支える生物多様性と農業多様性
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25300012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山越 言 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00314253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊谷 樹一 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (20232382)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有用植物 / 野生動物 / 環境政策 / 生態学 / 自然資源管理 / アグロフォレストリー / ギニア / タンザニア |
Outline of Annual Research Achievements |
二次的自然景観の保全は、農業多様性と生物多様性双方にとって有益であり、高い現代的重要性を持つ。2015年度、本研究課題では、アフリカの東西におけるアブラヤシの自然分布の多様性について、歴史的背景と現代の人々の土地利用との関連に注目して、以下のような活動を行った。 主調査地であるギニア共和国南部森林地域、とくに世界自然遺産ニンバ山周辺の生態系および農業景観について、現地調査および航空写真、衛星写真の精査から、アブラヤシの生息状況の概要を把握する調査、および食用ヤシ油の生産・流通状況調査を予定していたが、同地でのエボラウィルス病の流行の継続により、現地調査はおろか、首都での航空写真収集さえままならぬ事態が続き、2014年度に続き延期せざるを得なかった。また、研究分担者による隣国リベリアでの比較調査も、同様の理由から再延期した。幸い、2015年度の終期に、主調査地を含むギニア、リベリア、シエラレオネにおいてエボラウィルス病流行の終息宣言が出されたため、2016年度の現地調査は実施できる見込となった。 アフリカ大陸の東西にわたるアブラヤシの生息状況や利用を把握するため、研究分担者、協力者がタンザニア内陸部および島嶼部、また、マダガスカル中部高地域および南部乾燥林地域での広域調査を行った。既存文献により指摘されている在来アブラヤシ種のアフリカ地域での分布について、各種の伝播経路による諸仮説があるが、とくにマダガスカル島における分布の説明について新たな知見を得ることができた。 2015年度の主要な進展は、遺伝学ほか自然科学系の文献渉猟により、主調査地以外のアフリカ諸国から得られた調査結果を位置づけるために有効な、過去の分布、伝播に関する大きな理解が得られたことである。それらをまとめた総説論文の草稿が大きく進捗した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主として文献レビューにより、降水量、乾期の長さといった環境条件に加え、現在の人々による管理や利用方法の違い、伝播の歴史、植民地期の導入政策等による、アフリカの自然、人為的植生の中でのアブラヤシの地位の多様性についての知見が深まった。また、研究協力者により、タンザニア、タンガニーカ地域の国立公園周辺の農村において、アブラヤシの生息状況調査と野生動物によるアブラヤシの利用について、センサーカメラを用いた生態学的調査を進めた。本申請課題の主要な目的のひとつである、西アフリカのギニアおよび周辺地域での集中的現地調査が、エボラウィルス病により進展を妨げられたいっぽうで、2つ目のアフリカ大陸内、大陸間比較については大きな進展があったと言える。エボラウィルス病流行の終結により、主調査地ギニアでの現地調査が最終年度に行える見込となったため、4年間を通してみれば順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2016年度は、初年度に進展したGISによるアブラヤシの生息状況およびそれに影響を与えた人口増や焼畑の強度に関する検証に関して、ギニア首都コナクリでの1980年代の航空写真を入手し、すでに利用可能な1960年代、2010年代の航空写真・衛星写真の比較分析を先に進める。 ギニア南部での現地調査は、エボラウィルス病により休止していた調査助手等の研究体制の再構築を速やかに進め、アブラヤシの分布や人々および野生動物による利用調査を行う。 タンザニア西部およびザンジバル島、マダガスカル南部での野生動物によるアブラヤシ利用調査と人々によるアブラヤシ利用の調査を継続し、アフリカ大陸全体での伝播史との対応を明らかにする。 マレーシア・サラワクの大規模アブラヤシプランテーションを視察し、用いられている品種や近代化が進む植栽方式・栽培技術について調査を行う。 以上の調査結果を集約し、関連の国際・国内学会等において発表を行う。また、複数の総説論文および学術論文ほかの出版物として公刊する。
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Causes of Carryover |
西アフリカにおけるエボラウィルス病の流行により、主調査地であるギニア共和国および比較調査地であるリベリアでの現地調査が不可能となり、当該研究計画の実施を次年度に遅らせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度後半にエボラウィルス病流行の終結宣言が出されたため、2016年度の現地調査計画に支障はなくなった。このため、遅らせた計画分の予算は、目的通りギニアほかでの現地調査費として2016年度に使用する予定である。
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Research Products
(15 results)