2013 Fiscal Year Annual Research Report
薪窯の焼成時間と陶磁器変化の焼成研究-中国・日本窯
Project/Area Number |
25300026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
島田 文雄 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (90187435)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 龍窯 / 登り窯 / 焼成比較 / 備前粘土 / ゼーゲルコーン / メジャーリング |
Research Abstract |
石湾龍窯、芸大登り窯に同一の試験体を作成した。試験体は規格に適合した(赤土粘土、白土粘土、磁土)でそれぞれ作成し、収縮度をあらかじめ計測しておいた。試験体は本焼成前に芸大研究室のスーパーバーンテスト窯にて基本焼成を行い基本的なデータを収集した。各温度、焼成時間における陶磁器の焼造結果分析(比重、湿重量ー吸水率の測定を行った。表面熔釉度の比較、火色の発生、窯内雰囲気。窯内の炎の流れを各ポイントに温度を計るゼーゲルコーン、リングコーンを入れ、正確な温度を測定するための基本資料を準備した。本年はその焼成結果資料を収集すべく試料を準備し石湾の龍窯、芸大の登り窯を焼成し資料データを収集した。5月次年度の予備調査として備前窯の陶芸作家数人から備前土、その焼成方法など聞き取り調査を行い、備前土はしょうざん窯から「山E」個人作家の粘土は山本雄一氏から「1号」「2号」「H」の4種類を購入しテストピースとして試料を制作した。備前土はマスプロではないので個人作家の所有する粘土を調達できた事は本研究にとって大きな進展である。8月 中国、仏山市、石湾の龍窯と東京芸大取手校地の登り窯焼成を実施した。石湾の窯冷却期間を利用し禹州鈞窯の仁星航氏の工房に行った。通常の鈞窯焼成の時に窯入れし焼成していただくようテストピースを渡し焼成を依頼した。石湾窯は現在も使用されており長さ32mの龍窯を焼成した。やはり焼成時間は16時間足らずであった。焼成結果は石湾の陶芸品の焼成を目的に焼成しているので備前土は全滅に近い状態であったが、素直な試験結果が得られたことは本研究にとって大きな収穫であった。10月陶芸国際会議が開かれたトルコ、アンタリア地方の窯と焼成法、焼成温度、時間などアクデニズ大学にて資料収集を行った。11月実施した芸大の登り窯は長さ15m5室の容量で石湾の半分であるが、焼成は74時間、4日間の焼成で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は中国石湾と芸大登り窯の焼成を行った。火色分析試料試験体:赤土粘土、白土粘土、磁土小皿制作を制作した。釉下彩顔料発色分析試料、磁器小皿制作し、発色状況を計測した。5月から7月にかけて備前土4種類を取り寄せ轆轤ひきによる作品を制作し、決められた試験体と一緒に2013年、8月石湾の龍窯に入れ焼成した。窯詰から窯出しまで全行程に立ち合い実体験し調査することが出来た。その結果、まだ詳細な分析は行っていないが、ゲージリングの収縮状態から石湾の焼成温度が1400度まで達しているようであった。焼成時間16時間と窯出しの結果から石湾の焼成法は非常に独自性をもった焼成である事が解った。中国石湾の龍窯の焼成方法は石湾の陶彫作品が完璧と言えるくらい完成された焼成結果であったが備前土は全滅状態であった。この焼成が石湾地方にとって経済性もあり最良な焼成法であろうことを知った。10月陶芸国際会議が開かれたトルコ、アンタリアのアクデニズ大学の国際陶芸教育交流学会に参加し、トルコの窯と民窯的な焼成法など知ることが出来た。11月、芸大の登り窯の焼成は1990年以来毎年焼成しているが、長さ5室15mの窯は通常66時間見当で焼成している。今回の焼成時間は4日間、74時間かかった。各室の中央部分の上段、下段に試験体一式を計9個所、最後の捨て間は1個所入れて焼成した。第1室は1300度以上、2窒1280度、3室1300度から1280度、4室は上下左右様々な温度帯であり、同時に入れたゲージリングを計測することによってより詳細な温度分布と強度がこれからの試料分析により知ることが出来るであろう。芸大の登り窯は20数年焚いているのでこの登り窯を指標にして石湾、鈞窯、備前窯の特色があぶりだされるのではないかと期待される。試験体を分析、解析し焼成温度と時間の関連性・相違性を最終段階において解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
<26年度>は中国 河南省禹州市、鈞窯の饅頭窯と岡山県備前焼の登り窯の2窯を焼成する。饅頭窯焼成20時間、備前焼の登り窯が14日間の及ぶ焼成がどのような試験結果をもたらすのか検証し、鈞窯、備前窯の焼成法、粘土、釉薬などから来る必然的要素、どうしてそのような焼成法に至ったのかを探り2窯の生産課程を比較検証する。特に鈞窯の24時間焼成と備前の2週間焼成は非常に大きな開きがあるので結果がおおいに期待できる。試験体は25年度の試験体に準じて制作、焼成する。中国清華大学美術学院教授鄭寧氏の協力のもと、河南省禹州市鈞窯の任星航氏の星航鈞窯の窯を使用する。宋代の饅頭窯は燃焼室と焼成室に分れた単室窯で釉裏紅の名品が焼かれた窯で薪と柴を使って焼成されていた。中国陶芸作家の現代風の饅頭窯で焼成実験を行う予定であったが、前年度の予備調査によって現在の饅頭窯は登り窯の1室を切り取った構造であり、現在の灯油窯やガス窯と同じ単室倒炎式であることが解った。前年度の予備調査の折、任星航氏に鈞窯での通常の焼成を依頼した。鈞窯に於いては焼成依頼した試験体の回収と窯詰、焼成、窯出しまでの焼成を実施する予定である。備前窯では通常焼成している窯の一部を借りて焼成実験を実施する。できれば2窯位を使って、それぞれの窯にて試験体を焼成し、窯焚き記録や試料を多く収集し分析結果の高度化を計る。また26年9月IAC(国際陶芸アカデミー)世界大会がアイルランド・ダブリンで開催される。そのシンポジウムにゲストスピーカーとして招かれている。「アジアにおける伝統的陶芸とその教育」と言うタイトルで研究発表を行う予定である。その際、アイルランド、イギリスの伝統陶芸を引き継いでいる民窯地セントアイブス、産業革命によって近代産業としての陶磁器が創業されたストークオントレントの窯業地での焼成法の調査と焼成温度等を聞き取り調査する。
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