2014 Fiscal Year Annual Research Report
薪窯の焼成時間と陶磁器変化の焼成研究-中国・日本窯
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25300026
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
島田 文雄 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (90187435)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 龍窯 / 焼成時間 / 焼成温度 / 曲げ強度 / 吸水率 / 気孔率 / 登り窯 / 倒炎式窯 |
Outline of Annual Research Achievements |
薪窯焼成試験<鈞窯焼成研究>中国清華大学美術学院鄭寧教授の協力を得て中国河南省禹州市にある鈞窯の単房倒炎式石炭窯と岡山県伊部市の備前焼の登り窯の2窯を焼成した。鈞窯の試験結果は鈞窯の特色である乳濁釉と合わせて試験体を焼成した。我々の試験体はその窯で焼成された。伝統的な鈞窯の焼成方法であり、燃料は薪とエンジュと石炭で焼成されているので資料としては十分に値する焼成であった。備前焼の登り窯は14日間に及ぶ焼成で試験体が得られた。次年度は詳細に検証し分析することとして、その資料のデーターも十分に得られた。禹州星航陶磁研究所は30種位の窯が設置されている。当初は鈞窯の饅頭窯焼成を期待したのであるが、実際使用されたのは倒炎式の小窯であった。しかし燃料は石炭、松薪、エンジュを用いて焼成した。午前5時半焼成開始、石炭で800度まで上げて後は薪で攻め焚きに入り午後9時終了した。2日後に窯出しをして試験体の点検を行った。当初の計画では饅頭窯を薪と柴を使って2日間の焼成を実施するという予定であったが、今回の焼成した窯でも釉裏紅の名品が焼かれた窯であった。住宅地の真ん中に立地しているので、煙道には特殊な細工をして煙が表に出ないように工夫されて公害問題に対処しているユニークな窯での焼成であった。 <備前登り窯焼成研究> 岡山大学の小野山嘉木教授の協力を得て8月予備調査と焼成の打ち合わせを行った。9月備前焼の伊勢崎淳氏の登り窯の焼成に合わせて試験体を入れていただいた。9月9日~27日実施した。窯焚きは12日~22日の11日間という時間をかけた焼成であった。備前の試験体は最も長い焼成時間であったので、試験体も多くの灰をかぶり窯の手前と窯奥の試験体では著しい変化がみられた。11日間に及ぶ備前の試験体、70時間焼成の芸大試験体、16時間焼成の鈞窯試験体と16時間焼成の石湾龍窯の試験体を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は中国広州の仏山石湾鎮にある全長30メートルの龍窯の試験資料と東京藝術大学取手校地の登り窯を焼成し、資料を得た。26年度は4月、中国河南省禹州市にある鈞窯で焼成した。饅頭窯焼成予定であったが、試験体の数量の関係で単房倒炎式石炭窯で焼成した。また岡山県備前、伊勢崎淳氏の登り窯を9月9日から27日まで14日間かけて焼成・窯出しを実施した。26年度の焼成で予定していたすべての窯の試験体を入手することができた。鈞窯の饅頭窯での焼成は不可能であったが、現在の鈞窯陶器を実際に焼成している窯を用いて試験体が焼成されたので目的を達成したといえる。これらの試験体を基に、石湾の龍窯、東京藝術大学の登り窯、中国鈞窯の単房倒炎式窯、備前焼の登り窯の試験体を分析する。本研究目的である焼成時間と焼成温度の差によってどのような結果が生じるのか比較解明する準備が整った。それぞれの窯を実際に焼成し、窯の焼成温度、色状況を窯や場所、温度ごとに違って現れているのでその分析をする。それぞれの窯によって炎の廻りや窯詰方法も違っているので温度の分布状態に違いがある。温度分布、正確な炎の流れをつかむために各ポイントに温度を計るメジャーリングを入れた。温度分布と炎の流れを解明し、温度と時間の関連性を解明する。各試験体の強度調査、収縮率調査、火色の出具合調査、釉薬の溶解度調査を行い焼成温度と焼成時間の相関関係を調べることができる資料が集められた。同一の試験体で焼成するのでその変化が比較しやすく釉薬の溶け具合、釉下彩顔料の発色など各窯各様の大きな変化が発生することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
醴陵市の瓷芸堂陶磁研究所、華聯陶磁会社の窯に追加した試験体を入れ焼成する。資料作成で釉下彩顔料の発色比較、釉薬、火色の分析、陶胎強度試験、吸水性等の比較、化学的見地と試験体試料の焼造分析を行い焼成時間の差がどのように陶胎に化学変化させたのか検証する。結果を比較検討し、その焼成時間がどのように確定されたのか調査する。その焼成が社会的に常態化、産業化して行ったのか調査する。また釉下彩・染付産地である景徳鎮の窯でも試験体を焼成する。それぞれの窯の、窯詰め方法、焼成方法、焼成温度など比較し、試験体試料の分析結果をまとめる。本研究によって、各窯の特異性と焼成時間の関係を割り出し検証し、結果を報告書にまとめる。学術的な特色としてはメジャーリングを試料脇に置き正確な温度を測ることによって焼成時間と焼成温度など正確な試料を得ることができる。陶磁器の変化、乾燥重量、吸水重量、吸水率、焼成温度別収縮率等の検証結果を基にして焼成時間と焼成温度、窯内雰囲気の関係を解明することにある。時間と温度による焼締まり強度、釉下彩顔料の発色の違いなど単に表面的調査だけでなく実際の焼成を通じてこれら中国広州・石湾窯、禹州・鈞窯、湖南省醴陵・瓷芸堂陶磁研究所、華聯陶磁会社の窯と日本の東京藝術大学・登り窯、備前伊部の登り窯の7窯の地域の特色を基にした焼成法が生み出されたのか、独自的発展や特色が、どのような必然を持って成立したのかといった結論を引き出すことを目指す。学術的な新知見を探ることを試みる。
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Causes of Carryover |
次年度購入する物品費にあてるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品を購入する際に使用したいと考えている。
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