2015 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロネシアにおける巨石文化の成立と社会複雑化のプロセスを探る考古学的研究
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25300042
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
片岡 修 関西外国語大学, 国際言語学部, 教授 (90269811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (60435906)
竹中 正巳 鹿児島女子短期大学, その他部局等, 教授 (70264439)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マリアナ諸島 / グアム島 / 巨石文化 / ラッテストーン / ハプト遺跡 / アガ・トンガン遺跡 / プレ・ラッテ期 / ラッテ期 |
Outline of Annual Research Achievements |
「仮説検証的事例研究」班は、マリアナ諸島における巨石文化の形成背景および、北西沿岸のハプト遺跡との比較研究を目的に、平成26年度のアガ・トンガン遺跡第1次調査の成果を受け、第2次調査を平成27年8月、第3次調査を平成28年3月に実施した。アガ・トンガン遺跡の立地するグアム島南部の沿岸地域は、プレ・ラッテ期からラッテ期の多数の遺跡が築かれた地域であるが、スペイン時代(1565-1898年)以降現在に至るまで土地開発の影響を受け多くの遺跡が破壊され消滅してきた地域でもある。その意味からも、以下に示す今年度の多大な研究調査成果は今後の研究の課題と方向付けを明確にした意義は大きい。 ①現地での聴き書き調査の結果、遺跡周辺の土地開発と遺跡の攪乱背景が明確になり、もとの地形を理解できた。②遺跡の南側は現在の住宅周辺の窪地の延長で、大型の自然の落ちこみが存在していたことが判明した。③遺物の出土量から、ハプト遺跡同様に後背地のボアガ丘陵の崖下の地形に沿ってラッテストーンを使った高床式住居が構築されていた可能性を示唆した。④地表面から約40cmで、プレ・ラッテ期からラッテ期への移行期であるトランジショナル期の文化面を検出た。⑤炭素年代測定により、AD 130-330(プレ・ラッテ期)、AD 770-900(トランジショナル期)、AD 1300-1660(ラッテ期)の各時期の年代を確定した。⑥ グアム島北部の石灰岩台地崖下に営まれた同時期のハプト遺跡と同様に、3時期の間にそれぞれ400年のギャップがあり、非連続性を示した。⑦今後、グアム島だけでなくマリアナ諸島に全域における遺跡との比較研究を行い、遺跡の形成背景を理解する大きな研究課題が明確になった。 一方「総合的比較研究」班は、ミクロネシアにおける巨石文化関連の文献の網羅的収集と、大量の写真およびスライドの整理を進行させ、平成28年度の研究に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
面積約4,800平方メートルを調査対象としたアガ・トンガン遺跡の発掘調査で、プレ・ラッテ期とトランジション期とラッテ期の3時期の遺物(土器や石器や貝斧など)と動物遺存体(食用の貝殻や魚骨)が出土した。また、比較研究対象となっているハプト遺跡からは多量の遺物や動物遺存体が出土しており、研究目的を達成するための資料が着実に蓄積され分析が円滑に進んでいる一方、それらの図化や写真化が予定よりやや遅れ気味になっている。 2度の発掘調査を実施した「仮説検証的事例研究」班に比べ、「総合的比較研究」班は企画していた各地の巨石遺跡の実見調査や博物館の遺物の観察などフィールドワークがやや遅滞傾向にあった。
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Strategy for Future Research Activity |
「仮説検証的事例研究」班が今まで実施してきたハプト遺跡とアガ・トンガン遺跡の発掘調査の英文による研究調査報告書を作成し、ミクロネシアの現地政府(グアムとミクロネシア連邦)の歴史保存局に提出することを主要目的にしている。「総合的比較研究」班は、収集してきたミクロネシアの巨石文化に関する事例を比較分析し、巨石文化の形成と社会の複雑さのプロセスにおける地域差や共通点を明確にすることを今後の主要な研究目的とする。今までに蓄積してきた遺跡の実見調査や採集遺物の観察や口頭伝承と文献資料の整理分析の成果を研究調査報告書に反映させる予定である。
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Causes of Carryover |
グアム政府およびミクロネシア連邦政府の歴史保存局に提出予定の発掘調査研究報告書の作成に際し、人骨や動物遺存体や遺物の分析を専門家あるいは専門機関に依頼する必要がある。また、「仮説検証的事例研究」班および「総合的比較研究」班の両班合同でミクロネシアの巨石文化に関連の遺跡と博物館など現地所蔵の遺物の実見調査が不可欠となる。加えて、太平洋研究が最も進んでいる米国オレゴン大学にて文献資料の収集を行い、専門家からの教授を受ける予定である。 発掘調査研究報告書は英語で作成し、資料公開という観点から現地政府だけでなく研究機関や研究者にも報告書を配布する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主要な予算使途内容は次の通りである。 (1)旅費(航空運賃・宿泊費・日当など)、(2)翻訳などに要する人件費(謝金など)、(3)報告書の印刷費。
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Research Products
(6 results)