2013 Fiscal Year Annual Research Report
インターフェイスとしての女性と中国系移民のディアスポリック空間
Project/Area Number |
25300047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮原 曉 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 准教授 (70294171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三尾 裕子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195192)
中西 裕二 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50237327)
市川 哲 立教大学, 観光学部, 助教 (40435540)
片岡 樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (10513517)
木村 自 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (10390717)
河合 洋尚 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (30626312)
横田 祥子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (80709535)
王 柳蘭 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50378824)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人口移動 / 女性 / 文化変容 |
Research Abstract |
本研究では、東南アジア諸国の中国系コミュニティにおける女性たちの活動と、ディアスポラ空間における人々の動きの双方を相互に関連づけつつ研究することを目的とし、平成25年度には、そのための理論的、方法論的検討を行うとともに、各居住地域のローカルな場における女性の活動(婚姻、再生産、儀礼など)と、中国系コミュニティの国境を超える活動(国際結婚・越境移住・観光)に関する現地調査を分担して行った。 5月19日に、大阪大学吹田キャンパスと東京サテライトをテレビ会議システムで結び、本研究の理論的枠組みと方法論に関する議論を行うとともに、ディアスポリック空間の定義に関する議論を行った。この議論を踏まえ、7つの調査項目を内容を換えないまま、①社会関係やアイデンティティ、身体観等をめぐる交渉と創造の過程、②ディアスポリック空間が生起するメカニズムの解明、③メゾレベルの民族誌にむけた新たな分析枠組みの検討の3項目に構造化した。 現地調査に関しては、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、マレーシアにおいて、分担して実施し、それぞれの調査地で、中国系の女性の経験世界(中国系の男性と通婚した女性も含む)に関し、婚姻儀礼や婚資、通婚、祖先祭祀といった民俗知識のレベルと、中国系移民の居住地を越えたネットワークの構築や、国際結婚や越境移住、頻繁な国際移動、故郷訪問や国際観光等といったディアスポリックなレベルに分けて現地調査を進めた。 この成果の一部は、8月9日の国際人類学・民族学会(マンチェスター大学)での分科会報告に組み込むとともに、1月25日に日本華僑華人学会平成25年度第1回特別企画において報告した。また同研究会では、本研究課題の趣旨に即した華僑華人研究の新たな方法論と、ディアスポリック空間に関する理論的な検討も併せて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内研究会については、予算不足にも関わらず、予定通り3回開催することができた。 現地調査については、一部の研究分担者が校務の多忙により、現地調査は次年度以降に集中して実施することとし、25年度については、理論的、方法論的な研究を行った。また1名の分担者が調査中に不慮の体調不良のため、計画を縮小せざるを得なかったものの、他の分担者の現地調査は、概ね計画通りに実施されている。 1名の分担者は、所属先の海外オフィスに赴任する機会を得たことで、調査期間を充分に確保することができ、計画以上の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の現地調査を通して、本研究の中心的な課題である東南アジアの中国系コミュニティにおける女性の経験世界に関する基礎的な民族誌的資料の蓄積の必要性を痛感するようになった。26年度の早い段階で、調査項目を整理し、網羅的なデータ収集を行いたいと考えている。 また中国系の男性と通婚した非中国系の女性や、非中国系の男性と通婚した中国系の女性の実態については、これまでほとんど着目されておらず、地道なライフヒストリーの収集が必要である。 一方、本研究の課題が将来的にどのような方向に拡大していくかを見極めることは、本研究を期間内に進めるうえでの推進力ともなる。 一つの方向性は、歴史人類学的な方向性である。本研究が集積する民族誌的資料は、歴史学的史料によって補完されることで、例えば16世紀以降の東南アジアにおける中国系の女性の経験世界に関する歴史人類学的な理解が可能となる。 もう一つの方向性は、社会空間に関する人類学的理論の構築である。本研究では、経験世界、あるいは身体の移動の軌跡が生み出す空間を「ディアスポリック空間」と呼び、その把握をめざしているが、この課題は、中国系移民研究の範囲にとどまらず、(1)具体的でアクチュアルな実践と「社会空間」の関係、(2)日常的実践と、それが生成する社会空間での移動の意味、(3)「生きられる空間」で中心的な役割を持つ「近さ」の、身体の移動に伴う変容といった人類学的な課題に関わっている。これらの理論的な課題に本研究を位置づけることで、本研究が次に進むべき方向性が見えてくると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担者のうち2名が所属機関での役職のため、予期せぬ多忙に陥り、昨年度、予定していた現地調査が充分に実施できなかったことによる。またもう1名の分担者が、現地調査中に体調不良となり、予定していた調査の一部を実施できなかったことも、次年度への繰り越しをせざるを得ない理由となっている。 昨年度、予定した現地調査を充分にできなかった2名の分担者については、今年度、予定している調査に加えて現地調査を実施する計画である。 また、現地調査中に体調不良となった分担者については、今年度の現地調査と併せて昨年度の計画を実施する。 万一、昨年度と同様の予期せぬ事態が生じた場合は、他の分担者に計画の一部を振り向ける等の処置を施し、できるだけ繰り越しがでないように配慮する。
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Research Products
(34 results)