2013 Fiscal Year Annual Research Report
アジア回廊地域における援助対策としての「パンデミック感染症への社会不安」研究
Project/Area Number |
25300053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Ohka Gakuen University |
Principal Investigator |
成田 弘成 桜花学園大学, 学芸学部, 教授 (40189212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江下 優樹 大分大学, 医学部, 准教授 (10082223)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 開発援助 / パンデミック / 東西回廊 / 感染症対策 / 社会不安 |
Research Abstract |
アジア経済回廊諸国(ミャンマー・タイ・ベトナム・インド)を対象とする本調査では、特にミャンマーのヤンゴンおよびベトナムのダナンが新興都市として急速に社会・経済発展している現状を検証し、新たな雇用の拡大(工業団地)が近隣地域集団の都市移動に拍車をかけ、都市の拡大化が進行している一方、病院等の医療施設の不足などにより、パンデミックな感染症を含めた医療対策への社会不安が増加していることを確認した。初年度の調査としては、道路などのインフラ整備が進み、近隣の若者たちが都市通勤する新しいライフスタイルも生まれつつあり、こうした社会変化がこうした新興都市の医療の在り方を大きく変える可能性があることを確認し得たことは、大きな意義あった。 またメガシティとして既に多くの流入人口を抱えるタイのバンコクやインドのコルカタでは、すでにデング熱の流行があり、その疫学的調査(デングウイルス媒介蚊の採集)を含め、現住民達のデング熱対策を検証した。デング熱を媒介する蚊はきれいな水を好む性質があり、都市には多い飲料用の水がめがデング熱発生の一因ともなっているが、今回の調査では、政府指導による積極的な水管理が流行を阻止する要因であったことも確認した。しかし、メガシティではスラムなどの政府の指導が行き届かない場所も多く、今後の課題として認識された。 本研究の目的は、感染症への社会不安に向けての本格的なアプローチの確立を目指しており、年度当初から、社会不安の表現として、地域住民の社会(抗議)運動を重視してきたが、新興都市およびメガシティ共に、流動人口も多く、今後は、感染症からの「回避」行動も重要な調査項目として確認できたことは、理論作成上、重要であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、海外フィールド調査を中心に行うものであり、2013年度に予定された海外調査をすべて実施し得たので、順調に進展していると言える。 成田弘成(研究代表者)は、予定通り、アジア回廊新興都市の担当者としてベトナム・ダナン市に計1ヶ月(計2回)、ミャンマー・ヤンゴン市に2週間、タイ・バンコク市に2週間、インド・コルカタ市他に2週間、計2ヶ月半の調査を行った。江下優樹(研究分担者)は、メガシティ担当として、タイ・バンコク市およびインド・コルカタ市他において、各2週間、計1ヶ月の調査を行った。特に、タイ・インドの調査については、共同調査として実施し、デング熱を中心とする医学調査と感染症への社会不安に関するコミュニティ調査を統合化するアプローチを模索した。 成田弘成(研究代表者)が担当する社会不安に関する研究は、東西回廊地域の道路を中心とするインフラ事業の展開と密接に関連しているので、初年度の研究としては、東西回廊の発着・終着地点のベトナム・ダナン市とミャンマー・ヤンゴン市における予備調査を実施し、既に両都市には流動人口の増加と医療面での対応の遅れがあることを確認した。一方、江下優樹(研究分担者)は、タイ・インドでデング熱の疫学調査を実施し、デングウイルス媒介蚊の採集の他、最近のデング熱流行に対する対策を模索した。 本研究は、タイのマヒドン大学医学部との協力関係で実施しており、海外共同研究者の同大学コマラミスラ教授らと、デング熱対策については合同協議を実施した。しかし研究発表としてはまだ準備段階にあり、新年度の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、パンデミック感染症として、HIV/エイズ、デング熱、鳥インフルエンザなど多様な感染症を対象としているが、これらは異なる感染経路を持つゆえに、地域には重層的に存在していると考えるべきである。同時に、アジア回廊地域の多様性を考慮すれば、地域的な戦略を持って、これらの感染症対策を考察する必要性も認識される。 したがって、平成25年度では、メガシティのタイ・バンコクやインド・コルカタにおいては、デング熱調査を中心に据え、その他の新興都市においては感染症の流行状況に対応する柔軟な姿勢を取った。実際、経済的後進国のミャンマー・ヤンゴンやベトナム・ダナンでは、むしろHIV/エイズ対策の遅れがより問題視される必要があった。 平成26年度も、基本的にはデング熱を中心にその対策を検討するが、感染症の焦点をより拡大し、HIV/エイズや鳥インフルエンザなど、地域的な特性を考慮したものに発展させ、社会環境との関連性についてもより明確化する予定である。 調査対象地域の面からいえば、平成26年度以降は、タイをベースにした東西回廊の発展の流れに沿いながら、ミャンマー・ベトナム・インドの各回廊都市のコミュニティ調査を本格的に調査する予定である。東西回廊地域の発展が、社会環境に与える変化を確認しながら、重層的に存在するパンデミックな感染症が、回廊地域住民の「不安の連鎖」を造り出す実態を解明してゆく。 平成26年度以降は、タイのマヒドン大学医学部とのワークショップ(研究会合)を日本において開催し、日本の専門家との協力関係の上で、議論を重ね、研究発表をしてゆく予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] INOVATIVE TECHNOLOGY FOR USE IN VECTOR CONTROL2013
Author(s)
Yuki Eshita, Lucky R. Runtuwene, Kaori Noguchi, Eri Kawakami, Masako Fukuda, Akinori Tokunaga, Takashi Kobayashi, Raweewan Srisawat, Narumon Komalamisra, Shuichi Kawashima, Yutaka Suzuki, Hironari Narita, Hiroshi Ushijima,Tomohiko Takasaki, Ichiro Kurane
Organizer
“The 1st conference on asian pediatric infectious diseases(第1回アジア小児感染症会議)”
Place of Presentation
東京大学医学部3号館N101室、東京都文京区
Year and Date
20130824-20130826
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[Presentation] 節足動物媒介性ウイルスの迅速検出へのRT-LAMP法の改良2013
Author(s)
江下優樹,松原祥恵,Lucky R.Runtuwene,野口香緒里,川上絵理,大塚 靖,福田昌子,小林隆志,高崎智彦,Raweewan Srisawat,Narumon Komalamisra,Bouasy Hongvanthong,成田弘成,牛島廣治,Arthur E. Mongan,今田美穂子,前田龍一郎,森田公一,杉本千尋,倉根一郎
Organizer
日本家屋害虫学会 第34回大会・総会
Place of Presentation
日本大学生物資源科学部、神奈川県藤沢市
Year and Date
20130622-20130623