2013 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアの資源をめぐる国家・社会関係に関する比較研究
Project/Area Number |
25301008
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 仁 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (50313010)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 資源管理 / 東南アジア / 国家・社会関係 / タイ / カンボジア / ミャンマー |
Research Abstract |
初年度は、タイ、ミャンマー、フィリピン、カンボジアについて、各国の資源行政史にかかわる資料収集を行い、タイとカンボジアについては現地調査を実施した。当初の目標であった資源行政年表の作成については、ほぼ完成し、次年度は穴埋めをすると同時に、解釈を始める。個別事例の深堀については、ミャンマーについては文献収集作業にとどまり、現地調査の実施ができなかったが、カンボジアについてはある程度集中的に現地調査を実施することができ、その成果も日本語と英語の両方で公表する見通しが立った。またタイについても、人類学・歴史学でトップ5に入る査読雑誌 Comparative Studies in Society and History に成果論文が受理され、2014年7月には公刊される予定である。 これまでのところわかったことは、アジア各国における資源管理体制の変遷が、かなりの程度まで植民地政府の政策に影響を受けていること、また、地理的・人口的・民族的な特徴が資源をめぐる国家社会関係を強く規定しているということであった。たとえば、少数民族や華人労働者に資源採掘作業の多くを依存していたタイでは、それゆえに中央政府による高圧的な政策が続いたが、日本の場合は、入会紛争に代表される対立を繰り返しながらも、政府は地域住民と折り合う方法を模索し、最終的には住民懐柔的な資源行政が各地で展開された。カンボジアでは、植民地政府の財源確保という動機づけが、資源行政の基盤づくりに大きな影響を果たしている。今後は、これまでに検討した漁業、鉱物、森林に加えて灌漑や水管理に視野を広げて、課題となっているミャンマーに加えてフィリピンの事例研究を充実させていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンボジアとタイでの研究成果が欧米の一流学術雑誌に受理されたことから、おおむね順調であると評価できるが、当初の計画であったミャンマーに関する調査にほとんど進展がみられなかったので、今年度はこの点に力をいれたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
米国プリンストン大学での長期にわかる文献調査が可能になったので、英語文献が充実しているフィリピンとミャンマーの行政史にかかわる文献収集を強化するとともに、両国でのフィールドワークを今年度中に実施し、研究レポートのドラフトを作成することを当座の目標としたい。また、より大きな目標としては、タイやカンボジアでの調査を総合し、1冊の英文学術書籍としてまとめるために Book Proposal を完成させ、今年度中に出版社と交渉を開始できるよう準備したい。
|
Research Products
(4 results)