2015 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済形成期における村落的共同性の社会経済史的比較研究-日本とバリ-
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25301028
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50164835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (70271856)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 村落社会 / 共同性 / バリ / スバック / 比較研究 / 家と村 / スクンプール村 / 農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、国内の村落的共同性に関する調査分析作業として、上塩尻村(長野県上田市)、今井村(長野県長野市川中島)等に関する基礎的データの再検討と分析を行い、バリ農村との比較を進めるための「村落的共同性」に関するモデル構築作業を進め、3月に開催した研究会においてその一部を報告・討論し、宗教組織や村落行政等の要素も加味した新たなモデル形成への模索を進めた。 今期の調査研究の中心は、前年度より進めていたバリ島北部村落に関する悉皆アンケート調査の実施とその分析のための準備作業である。合計3回のバリ出張により、①現地研究協力者(ガネシア教育大学日本語学科)と共同でブレレン県スクンプール村の悉皆アンケート調査を実施し、調査委託部分も含め、村内住民家族約250世帯についての調査票を対面調査によってほぼ全数回収することに成功した。②バリ州統計局における1980年代以降のバリ統計書について、調査・撮影作業を行うとともに、近年のデジタルデータDVDを組織的に収集する作業を行い、多くの統計データを取得することが出来た。③バリ州政府農政局への二回にわたる訪問調査を行い、特にこれまで公開されてこなかったバリ州全域の農政報告書およびそれに類する関係文書の閲覧と撮影を実施する事が出来、1980年代以降のバリ州農業関連データとブレレン県スバック等に対する農政関連情報を系統的に収集することが出来た。 3月には現地協力者(カデ・アンタルティカ講師)を日本に招聘し、回収アンケート票の搬送とデータ入力作業のための準備作業を行った。またアンケート作業を通じて新たに獲得することが出来た様々な村落関連情報を得ることが出来た。さらに、新潟大学で研究会を実施し、アンタルティカ講師によるスバック調査結果報告を受け、バリ農村社会における村落的共同性としてのスバック組織をめぐる議論についての新たな知見を獲得することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度より継続しているバリ村落の実態調査について、 ①予定していたスクンプール村のアンケート調査をほぼ終了させることができ、現住村民250世帯のほとんどについて調査票の回収を完了することが出来た。 ②これまで過去半世紀にわたるバリ農業の実態と農政の特質に関する本格的な資料調査は行われてこなかったが、今回、バリ農政局での資料調査によって、1980年代以降のバリ農業に関する内部統計資料を収集することに成功し、バリ農業と農政の歴史的展望を行う作業の基礎データを獲得できた。 ③バリ農村の共同性を構成するスバックの実態について研究協力者との共同調査の成果を得ることが出来た。この成果については後日具体的な展開をさせる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であることから、今年度のバリ調査によって獲得した、アンケート票の分析、農政資料の分析、スバック機能の分析を本格的に行うことになる。そのための入力フォーマットの作成、資料分析のスケジューリング、スバック実態調査のとりまとめ、などを集中的に実施する予定である。なお、8月下旬に、これまでの研究成果をテーマとした国際カンファランスを、ガネシア教育大学と共催でシンガラジャ市において実施する予定であり、現在その準備を進めている。バリ調査の成果を現地において公開のカンファランスという形式で実施することにより、当該問題についての現地での関心を喚起するとともに、研究成果の社会的還元をバリ社会で行おうとするものである。
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Causes of Carryover |
当初想定していたアンケート調査票のデータ入力と分析作業が、調査票回収と内容確認作業を現地協力者の来日(3月中旬)をまって行わざるを得なかったため年度内に開始することが出来なかったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であることから、特に重点的にアンケートデータ処理と分析を行うことになっており、そのために使用する計画である。なお、この分析の成果は8月末のバリ州で開催するカンファランスでの報告に用いられる。
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Research Products
(2 results)