2015 Fiscal Year Annual Research Report
中規模都市・農村連携による食品残渣利用:ダナン市の社会変化と持続可能性
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25303006
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
加藤 尊秋 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (20293079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門上 希和夫 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60433398)
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
二渡 了 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60173506)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 廃棄物再資源化 / 環境政策 / 環境技術 / 食品残渣 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアの多くの中規模都市には、養豚業者による食品残渣の伝統的・自然発生的な回収網がある。しかし、経済発展の中でこのような自然発生的なしくみは、その能力を弱めていく可能性がある。本年度の研究では、食品残渣利用者について、研究代表者らが2011年に行った調査結果と経時的な比較をするための新たな調査を実施した(2016年3月)。調査対象は、ダナン市郊外の農村地域であるホアバン県である。2011年に調査を行った30軒の養豚業者を中心に訪問面接調査を実施した結果、この5年間の間に、養豚への食品残渣活用について、いくつか特徴的な変化が生じたことがわかった。まず、養豚の規模拡大とともに、食品残渣を用いない飼料中心の飼育に移行した業者が存在することがわかった。この場合、病気の防止など、養豚経営の効率化がおもな理由である。また、これ以外の小規模経営の農家においても食品残渣と飼料を混ぜて使うなど、給餌の仕方が変化した場合が多かった。この理由としては、養豚業者の増大による、食品残渣の不足が挙げられる。多くの業者が、ダナン市都心部からの食品残渣回収について、競争の激化を語っていた。 このため、食品残渣排出者の排出状況については、食品残渣の分別があまり行われていないことが昨年度の本研究で判明している市場等でのヒアリング調査を行い、食品残渣提供量を増大させる可能性について検討を行った。 持続可能な食品残渣利用政策の探求については、経済情勢や衛生観念の変化等により、養豚への食品残渣の活用が難しくなった場合を想定し、食品残渣の分別・回収網を活用する一方、処理方法を変更する例として、食品残渣のメタンガス化について、ライフサイクルアセスメントによる環境負荷の推計を行った。また、現地の小学校での環境教育試行を通じ、家庭等においてひきつづき食品残渣の分別を続けてもらうための情報提供方策を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状のところまだ決定的ではないものの、経済発展の中で自然発生的な食品残渣利用のしくみが弱まっていく兆候が見いだされたため、現在のダナン市民が持つ食品残渣リサイクルの習慣のうち、食品残渣の分別とその利用を切り離して前者を長期的に活かすしくみを考える必要が生じた。この計画変更により、本研究実施のために1年間の期間延長申請を行い、さきごろ認められたところである。本研究は、変更後の計画にしたがい、おおむね順調に進められている。すでに、ダナン市の小学校における食品残渣および廃棄物リサイクル教育の試行を行い、今後、家庭や学校等において食品残渣の分別をすすめるための課題を把握している。これにより、一般に臭いや手間のために嫌われがちな食品残渣分別について市民の習慣を維持する方策を、今年度にさらに検討するための準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、平成28年度で終了するため、これまでの研究成果を取りまとめる。食品残渣の排出者と利用者に関する一連の調査結果を統合的に分析し、食品残渣の分別、収集、利用に関わる現在の社会的なしくみが、今後どの程度続く可能性があるか、また、継続が困難な場合にどのような代替案があるか、検討を行う。特に、ダナン市において市民の間に伝統的に根付いている食品残渣分別の習慣を今後の社会変化の中でも維持するために、小学校や地域での環境教育や広報活動を含めた方策を試行し、その効果を評価する。本研究に携わる日本およびベトナムの研究者、また、これらの研究者の研究室に所属するベトナム人大学院生等が連携して上記の作業を仕上げ、また、アジアの中規模都市を念頭に成果の一般化を図る。
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Causes of Carryover |
ダナン市の調査では、経済発展の中で自然発生的な食品残渣利用のしくみが弱まっていく兆候が見いだされたため、現在のダナン市民が持つ食品残渣リサイクルの習慣のうち、食品残渣の分別とその利用を切り離して前者を長期的に活かすしくみを考える必要が生じた。このしくみの候補として、現地の小学校や地域における廃棄物環境教育を試行することとなり、研究期間を次年度まで延長するとともに、次年度の活動のために資金を確保して繰り越しを行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した資金は、おもに、現地の小学校や地域で食品残渣活用に関する環境教育や広報活動を試行し、その効果を評価するために用いる。使途としては、現地への旅費、効果把握のための現地研究機関への調査委託などである。このほか、研究成果を広めるために学会発表(旅費、参加費)や論文執筆(英文校正)等に活用する
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Research Products
(5 results)