2013 Fiscal Year Annual Research Report
地震と降雨による複合斜面災害の危険度判定と早期警報技術の適用に関する海外調査研究
Project/Area Number |
25303015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内村 太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60292885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東畑 郁生 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20155500)
古関 潤一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30272511)
桑野 玲子 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80312974)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 斜面災害 / モニタリング / 早期警報 / 中国 / 台湾 |
Research Abstract |
初年度は、既にこれまで共同研究を行ってきた経緯から、中国での調査研究を中心に実施した。成都山地災害与環境研究所の協力で、2008年のブン川地震以降、四川省成都市近くで土石流災害が多発する地域での調査研究を行った。2013年9月に、6箇所の地すべり、土石流の現場を踏査した。その中から、都江堰市の虹口郷紅色村干溝、虹口郷連合村銀洞子の2箇所を研究対象として選定し、斜面および土石流路の監視を開始した。 過去に開発してきた斜面のモニタリング機器を用いた観測データの分析から、早期警報の判断基準を検討した。現在までの実験データでは0.01 度毎時の傾斜角度変化で崩壊注意報、0.1 度毎時で避難警報をそれぞれ発出することを提案した。中国での斜面の監視は、その裏付けとなるデータの蓄積を期待するものである。 また、台湾では、高雄第一科学技術大学の協力を受け、次年度の本格的な斜面の監視に向けて、現地の研究協力者との打合せと現地踏査を実施した。調査対象は、高雄市燕巣地区の廃棄物処分場の周囲の法面で、継続的に地すべりを起こし、擁壁、通路、処分場の遮水工に変状を起こしている。この法面は、異方性が強く一定方向に簡単に劈開する若い泥岩で覆われており、また応力解放や湿潤乾燥の繰返しによって、急速に劣化する性質が強い。変状箇所もこの劈開が最も起こりやすい方向にある。開発した機器により、この法面を常時監視し、変状の程度や継続性、降雨などとの相関を観察する。これは、個別の斜面ごとに、表層の変位や土壌水分量を常時モニタリングすることで、斜面の安定度を評価する方法の導入例となる。 また、モニタリング機器を途上国でも導入しやすくするために、より単価の安い機器を開発し、性能を確かめるために実斜面での試験運用を行った。 また、斜面の危険度評価のための弾性波探査技術について、実験室での原理の実験および斜面での実証試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査研究の第1の目的は、地震によって損傷し、降雨に対して不安定になった斜面の実態とメカニズムの把握と、危険な斜面の抽出の方法や災害を軽減する方法の提案である。 危険な斜面の抽出の方法や災害を軽減する方法については、台湾との研究交流で、異方性が強く、急速に風化する若い泥岩で構成される法面の監視を実施することになり、斜面の継続的な監視によるリスク判定の事例研究を行う準備ができた。このような破砕性の強い地盤材料で構成される斜面の崩壊は、中国、台湾だけでなく、日本、東南アジアを含めて広く認められるものであり、新しい研究課題が得られた。また、弾性波探査の方法を拡張し、斜面表層の不安定層の構造を効率的に推定する方法を、検討した。 一方、地震による斜面の損傷の実態、その評価方法と、その後の降雨による斜面災害との因果関係、時間の経過に伴う斜面の安定化や風化の進行についての分析が、今後の課題である。これには、中国、台湾の研究者の協力による情報の収集と整理が必要である。 本調査研究の第2の目的である、監視機器を用いた斜面崩壊の早期警報による災害軽減技術の実用化については、中国科学院・成都山地災害与環境研究所との共同研究によるこれまでの計測事例をまとめ、斜面の表層の傾斜変位を監視し、0.1度/時間の速さで傾斜角度が変化すると警報を発令する、という暫定基準を提案した。また、新たに中国の2箇所の地すべり・土石流の現場で、調査を行い、監視を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成26年度】 中国では、都江堰市の虹口郷紅色村干溝、虹口郷連合村銀洞子の2箇所の監視を継続し、斜面の崩壊前に見られる挙動を分析する。また、対象とする斜面を増やして、同様の調査研究を行い、データを蓄積する。 台湾においては、高雄第一科学技術大学との協力で、高雄市燕巣地区の廃棄物処分場周辺の法面の監視を開始する。この斜面は、異方性が強く、急速に風化する若い泥岩でできている。このような特殊な地盤材料でできた斜面の変状が、現在行っている監視の方法でどのようにとらえられるのか、特に検討したい。同様の地盤材料による斜面災害は、日本国内では沖縄に多く見られる。土質資料の海外からの持ち込みは、植物検疫などで困難な面があるため、沖縄で同様の試料を採取して、この種の材料の力学特性、風化の性質を調べる。また、同様の現象は、インドネシアのバンドン市周辺の地域でも起きており、沖縄~東南アジアで広く認められる。今後、バンドン工科大学の協力も得られることになり、このような斜面の監視の方法を検討する。 また、台湾では、台湾交通大学との協力を受けて、上記以外の対象者面を選んで、観測を行う。こちらは、斜面の深い部分で滑りが起こるケースが対象で、深いすべりによる斜面の変状を、斜面表層に設置した傾斜計でどのようにとらえられるかを検討する。 【平成27年度】 中国、台湾での調査研究を継続する。最終年度は、調査した斜面の情報を整理するとともに、地震後の調査に基づいて危険な斜面を抽出する手法についてまとめて、提案する。また、斜面の監視に基づく斜面崩壊の早期警報技術について、中国、台湾での適用実績をまとめて公開し、特に現地の行政、防災に関わる技術者へ成果を紹介して、普及を図る。
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