2014 Fiscal Year Annual Research Report
標高の異なるタイ国養魚池を活用した環境ゲノミクスによる温暖化影響の解析
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25303021
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
板山 朋聡 長崎大学, 工学研究科, 教授 (80353530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 徳雄 明星大学, 理工学部, 准教授 (00353532)
田口 浩一 長崎大学, 工学研究科, 教授 (00625345)
杉浦 則夫 筑波大学, 国際室, 特命教授 (10302374)
間世田 英明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (10372343)
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 講師 (10581613)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有毒藍藻 / 淡水養殖 / 富栄養化 / 温暖化 / ミクロシスティン / 栄養塩 / 統計解析 / タイ国 |
Outline of Annual Research Achievements |
有毒藍藻発生への温暖化の影響について明らかにすることを目的とし、タイ国の北部(チェンマイ近郊9池:約350m、サムーン山岳地域7池:約550~700m、パヤオ地域13池:約350~450m、チェンライ地域3池340m)から中部(ランパン10池:約350~400m、スコータイ13池:約50m、ナコーサワン3池:約10m)に点在する標高の異なる養魚池を5月、9月、12月に調査してサンプル水を採取した。サンプル水とろ過捕集物は凍結保存した。また、9月12月期の途中まで分光計が壊れて使えなかったのでクロロフィルaは、後日、ろ過捕集した凍結保存サンプルを使って測定したが、測定精度が悪く再測定が必用となった。次に、凍結保存サンプルを用いて栄養塩の測定とDNAの抽出を行い、さらに全藍藻(16SrDNA)、全Microcystis(16SrDNA)とmicrocystin合成遺伝子mcyEをReal Time PCRで定量し、さらに原核微生物の群集構造解析を試みた。しかしDNA抽出効率を検討した結果、藻類量(DNA量)が少ないサンプルでは、従来のCTAB法では抽出効率が著しく低いことが判明した。そこで、多量の滅菌グリコーゲンとλファージDNAを添加してイソプロパノール共沈することにより抽出効率の改善を試みた。 以前の調査データに関してTNTP等の栄養塩と温度(季節)を説明変数とした一般化線形モデルによって解析した結果、クロロフィルaは高温期に多い傾向を示したが全藍藻およびmcy遺伝子は低温期に多く発生することが判明した。また、micorcystin検出等の比較的低頻度の事象に対して有効なベイズ統計を用いたゼロ強調モデル解析法を開発した。さらに、温暖化に伴う養魚池の温度躍層形成と生態系への影響評価に関して、養魚池に多層流解析モデルを適用した予備的なシたミュレーションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)9月期の調査の時に、現地の共同研究を実施しているメジョー大学研究室にある分光計が壊れたために、9月期の栄養塩分析、クロロフィル分析ができなかった。12月の調査時の途中に修理が完了した(メジョー大学からの臨時予算を待っての修理となったので、修理が大幅に遅れた)。修理完了後に保存サンプルのクロロフィルaの分析を実施したが、通常は最大でも20%程度のCV値が、今回は90%以上の場合もあったため再度の分析が必用となった。同様にTN,TP等の栄養塩の分析に関しても分光計が使えなかったために遅れが生じた。その後、共同研究者側で分析を継続し、遅れをとりもどしつつある。 2)これまで用いていたCTABによるDNA抽出の効率が、藻類が少ない池では非常に低いことが判明したため、9月の途中までのサンプルでDNA抽出を一旦停止した。12月の調査時に、新手法を試みて残りのサンプルに関してのDNA抽出と定量PCRを実施する予定であったが、これまでDNA抽出で用いていた高速冷却遠心機(100mLチューブが使用できる)が経年劣化もあり故障破損したので今年度のDNA抽出作業がそこで中断した。
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Strategy for Future Research Activity |
水質分析> 微量凍結サンプルからの蛍光分光法を用いた手法によりクロロフィルの再測定を実施する。同時に未処理のサンプルのTN、TP等の栄養塩の測定を行う。PP2A酵素アッセイによりミクロシスティンを測定する。 DNAの再抽出と解析> 今回の調査した養魚池の中には藻類の発生量が非常に少なく、全DNA量が少ない池も多い。そこで、低い全DNA量の場合のDNA抽出の効率を改善した改良手法による再抽出と定量解析を行う。その方法は、凍結保存のサンプルにグリコーゲンとλファージDNAを入れイソプロピルアルコールにより共沈させ、λファージのDNAを回収率の指標として定量する(Real Time PCR)。さらに、16SrDNAベースでの全藍藻、全microcystisと、mcy遺伝子(E,B等)に関してReal Time PCRを現地で実施する。また、カビ臭産生遺伝子geoAについても検出と定量を試みる。さらに選定したサンプルについて16SrDNAの全原核微生物用プライマー(EMPprimer)を用いてPCRを行い、現地で原核微生物の群集構造解析を実施する。 データ解析と養魚池数値モデルと総合評価> 統計解析として、一般化線形モデルに加え、ベイズ統計を用いた低頻度事象のためのゼロ強調モデルにより全藍藻やmcy遺伝子等に対する栄養塩と温度要因(標高+季節変化)に関する解析を行う。共同研究者の田口により作成された数値モデルCOSMOS(多層流解析モデル)を養魚池に適用し、気温上昇と水温躍層の形成頻度の関係解析を実施し、養魚池生態系への温暖化影響を検討する。さらに、統計解析や数値モデルの結果を踏まえて、養魚池等の富栄養化水域における藍藻発生への温暖化の影響解について解析を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度は分光計や高速冷却遠心機の故障のために、DNA抽出や分析作業が中断したので、次年度にDNA抽出や分析等を引き続き行うことが必用なため基金分の予算を繰り越し、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Toxigenic cyanobacteria in aquaculture fish ponds in Thailand2014
Author(s)
Tomoaki Itayama, Redel Gutierrez, Kazuya Shimizu, Dong Xia, Norio Iwami, Fumiaki Furusawa, Chayarat Pleumsumran, Sirapran Fakrajang , Reunkaew Praphrute, Norio Sugiura and Niwooti Whangchai
Organizer
15th World Lake Conference
Place of Presentation
Perugia, Italy
Year and Date
2014-09-01 – 2014-09-05
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