2013 Fiscal Year Annual Research Report
リバースエンジニアリングとしての建築史学,古代ローマ遺跡のソースコードを読み解く
Project/Area Number |
25303025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀 賀貴 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20294655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池口 守 久留米大学, 文学部, 准教授 (20469399)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オスティア / ポンペイ / レーザースキャニング / リバースエンジニアリング / 廃棄物処理 / 動物考古学 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
4月から6月まで英国Leverhulme財団の客員教授として英国ケント大学に赴任,レーザースキャニングの考古学への応用とその実践について連続講義,セミナーを実施した。滞在中にポンペイ研究のレイ・ローレンス教授,およびオスティア研究のルーク・ラヴァン博士と本科研の研究計画および発展性について討議を繰り返し行った。また,4月にはオックスフォード大学にてオスティア都市・建築研究のジャネット・ディレーン博士と意見交換をし招待講演を行った。6月にはロンドン大学の公開セミナーでもモザイク研究に関するレーザースキャニング技術応用について招待講演を行い高い評価を得た。9月,10月にポンペイ,オスティアで調査を行った。ポンペイではスクオレ通り,レジーナ通り,イシデ通りのスキャニングを完了。中央広場からスタビア通りにいたる交通規制の実態が解明されつつあり,11月には日本建築学会へ論文を投稿(3月末時点で査読中)。また3月にはポンペイのカプア門付近で出土の獣骨の分析作業を開始,後62-79年に獣骨廃棄が集中しており62年の震災で発生した廃棄物の処理に深く関連していることが明かとなった。また,食肉処理のみならず道具としての利用を示す加工の痕跡なども確認された。オスティアにおいてはデクマヌス・マキシムスの東端,西端部でデータの収集を完了した。今後の都市形成過程に関する研究の進展が期待される。夏期に予定していた非公開の「ミューズのインスラ」,「ジョーヴェとガニメデの家」の実測調査が遺跡監督所の要請で延期されたため,「カーセ・ア・ジャルディーノ」とよばれるハドリアヌス帝時代の開発地区の実測を開始した。「ミューズのインスラ」について予備調査から得られた成果を2月に日本建築学会へ論文投稿した(3月末時点で査読中)。一部調査の延期要請にしたがって3月に追加調査を実施し,上記2軒に加えて「黄色い壁のインスラ」の調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オスティアにおいて8,9月に予定していた非公開地区の調査が延期になったが,3月に追加調査が実現し,次年度に調査を予定していた「黄色い壁の家」の調査が実現したこと。加えて次年度調査予定であった「イレオドゥーレの家」の調査許可も得られ,次年度4月に調査が実現することとなった。3月にオスティア遺跡監督所においてジェルモーニ所長,およびサンジョルジョ実測部長に調査の中間報告を行った際に遺跡監督所から非常に高い評価を得たこと。その証左として2014年については本科研による「日本隊の調査以外は報告が不十分なためすべて不許可とした」という所長の発言がある。イタリアの遺跡監督局との深い信頼関係が構築され,今後の研究に対しても親密な協力関係が期待できる。 さらに3月,6月の国際招待講演をつうじて,本科研が示す研究目的,方法が国際的に高く評価され期待も得られたことがあげられる。しかも本科研の研究成果が初年度にもかかわらず2本の論文投稿へと結実していることも当初計画以上の進展を示している。 またポンペイについても,予定通り獣骨の分析に着手した上,すでに地震などの社会変動,あるは道具としての利用など新知見を得ており,予想以上の成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
オスティアにおいては街路空間の実測がほぼ完了した。オスティア遺跡監督所から供与されたGPSデータとレーザースキャンによる3Dデータを照合したところ鉛直方向に40-70cm程度の誤差(水平方向は15cm程度)が認められ,洪水シュミレーションには十分な精度であるが,都市形成過程などより精密な分析を行うために長距離型のスキャナーによるデータ収集が必要である。レンタルや民間企業の協力を得て実現可能を探る。また,今後は街区内部の実測を着実に進めていく予定である。本年度には「アンノナリア・フォルトゥーナの家」や「ロッタトーリの家」など南部の街区の実測に着手した。次年度はこうして得られた3次元情報にもとづいて設計手法,動的建設プロセスを解明に着手するが,BIM(Builing Information Managemant)を応用した古代遺跡の三次元情報化を研究推進の方策として計画している。まずは採光環境を分析するためGPSとの連動によって得られる採光シミュレーション情報をデータに取り込むことによって,増築,改築などの動的プロセスの中に「採光の確保」が存在したかを考察する。ポンペイについては,研究分担者の池口守准教授を中心にサレント大学,デ・グロッシ教授を中心とするグループとの協力関係のもとで分析作業が開始され,ポンペイ遺跡監督局との信頼関係の更なる深化をはかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入する物品の予算が予定よりも安価で購入できたため。 次年度の消耗品費に繰り込んで使用する。
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Research Products
(8 results)