2013 Fiscal Year Annual Research Report
低温バイオプロセス構築の基盤となる低温適応微生物の探索
Project/Area Number |
25303028
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教(Research Associate) (90511238)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 低温適応微生物 / バイオプロセス / リン脂質 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 中華人民共和国 |
Research Abstract |
(1) 中国の内モンゴル寒冷地域で採取した土壌サンプルについて、低温適応微生物をスクリーニングした。その結果、4℃において LB 寒天培地で良好に生育する微生物が得られた。16S rRNA をコードする遺伝子の配列解析を行った結果、本菌は Pseudomonas mandelii と同定された。 (2) 南極海水由来の低温適応細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 は 0℃付近の低温条件下で、高度不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸 (EPA) を含むリン脂質を生産する。機能性脂質として注目される EPA 含有リン脂質の生産系構築に向けて、本菌における EPA 含有リン脂質の生合成機構を解析した。本菌はリゾホスファチジン酸の sn-2 位にアシル鎖を導入する酵素 PlsC のホモログを 5 つもつが、このうち PlsC1 が EPA 含有リン脂質の生合成を担うことが示された。PlsC1 の細胞内局在性を解析した結果、分裂途中の細胞の中央部に本酵素が局在することが示された。一方、EPA の生合成に関与するタンパク質 Orf5 も類似した局在性を示した。PlsC1 の細胞中央部への局在は、Orf5 を欠損した変異株では見られなくなったことから、PlsC1 と Orf5 の間に相互作用のあることが示唆された。EPA 含有リン脂質の生合成において、EPA 生合成酵素から EPA 含有リン脂質生合成酵素に効率よく基質が供給される仕組みのあることが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国寒冷地域から新規低温適応細菌を取得することができ、また、低温適応細菌 S. livingstonensis Ac10 におけるリン脂質生合成機構について重要な新知見が得られた。これらの点については大きな進展が見られたといえるが、一方、新規低温適応微生物のスクリーニングに関しては、生育速度、菌体収量、物質生産性の点で、さらに優れた特性をもつ微生物の取得に向けて検討の余地があるため、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
培地組成などの培養条件を変えた新しいスクリーニング系で、生育速度、菌体収量、物質生産性の優れた低温適応微生物の取得を目指す。S. livingstonensis Ac10 など、すでに取得済みの低温適応微生物に関して、これらを宿主とした物質生産系、特にタンパク質生産系の開発に取り組む。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初設定した培養条件で得られた低温適応微生物の種類が予想外に少なく、培養条件を変更したスクリーニングを次年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。 培地組成などの培養条件を変えた系でスクリーニングを行い、生育特性や物質生産性の優れた低温適応微生物の取得を目指す。また、得られた微生物の遺伝子操作系を開発する。そのためのサンプル採取にかかる旅費や、培養用試薬、遺伝子工学用試薬などの消耗品に使用する計画である。
|