2015 Fiscal Year Annual Research Report
EU諸国における小売対応型の青果物産地マーケティングの展開構造の解明
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25304034
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
李 哉ヒヨン 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60292786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森嶋 輝也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30391486)
清野 誠喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90225095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | F&V Marketing / Italy / Trento Alto Adige / Apple / Marketing strategy / Competitive strategy / Brand strategy / Channel management |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(H27)は、少数の大手小売企業の市場集中度が高まっている、欧州連合の青果物マーケットにおいて、その市場対応をめぐる青果物の出荷組合間の競争構造を明らかにすることを課題とした調査研究が行われた。 イタリアのTrentino‐Alto Adige州には、欧州最大のりんご産地が広がっている。これらのりんご産地におけるりんご販売をめぐっては、三つの農協連合組織(Consorzio VOG, Consorzio Melinda, VIP Coop)が互いを競争相手として意識されている。そこで、各々の農協連合組織の競争戦略とりわけブランド戦略とチャネル戦略を比較するサーベイが行われた。 その結果、VOGは海外市場をターゲットとした製品差別化とりわけ輸出先市場に受け入れられる多様な品種の導入が競争戦略となっていることに対して、Melindaは、強いブランドの育成に力を注ぎ、イタリア国内市場を中心に自社ブランドを最終消費者に認知させるべく、大手小売企業との取引を避け、卸売や中小のスーパーマーケットをチャネルとして管理している競争戦略を採用していた。一方、VIPは、Melindaに比べてブランド力の弱さをカバーすべく、標高の相対的高い立地上のメリットを活かした高品質戦略とともに、大手小売企業との取引を強化するサプライチェーン構築を進めてきている。 このような、青果物の産地間競争は、ブランド戦略、チャネル戦略、製品差別化戦略を組み合わせた、マーケティング戦略間の競争の形を帯びていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施中(H27年度)において、研究代表者が交通事故に遭遇したために、海外への渡航調査に制約を受ける事態となった。また、EU全域に広がっているテロの脅威にも憚れ、当初予定していたフランスの出荷組合調査も実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大手小売企業の市場集中度が高まる中、青果物の販売事業に特化した農協組織が単独では構築し難い、効率的サプライチェーン構築を農協間ネットワークを通してクリアしている事例研究を通じて、その組織構造やガバナンスのあり方を検討していきたい。このような農協組織の再編と農協間ネットワークの構築が小売対応型の青果物産地マーケティングの展開構造を大きく規定するよう要因であるからである。
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Causes of Carryover |
研究代表者の交通事故により、海外渡航調査が順調に進まなかったために、一部の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、イタリアとフランスを対象に、青果物出荷組合の典型としての農協組織のネットワーク構造とりわけ連合農協、アソシエーション農協の組織構造や意思決定にみるガバナンス構造を現地調査により確認する予定である。
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