2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジア途上国の家畜衛生管理における行動とインセンティブの経済疫学研究
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25304035
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
耕野 拓一 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (20281876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蒔田 浩平 酪農学園大学, 獣医学部, 准教授 (40588133)
仙北谷 康 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50243382)
西田 武弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70343986)
宮崎 さと子(窪田さと子) 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90571117)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 家畜保険 / モラルハザード / ベトナム / 酪農 / 逆選択 / インセンティブ / リスク回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の予備調査を踏まえて、平成26年9月に研究分担者の全員が参加し、ハノイ北部のBAVI地区でフィールド調査を行った。家畜保険非加入農家60戸、保険農家37戸の合計97戸のランダムに選択した農家を、事前に準備した調査表により調査を行った。全農家び搾乳牛からは採血・ミルクのサンプリングも行った。また、平成27年3月にもBAVIで補足調査を行った。 血液分析の結果からは次の点が明らかとなった。1)10.5%のミルクサンプルで乳房炎の原因菌が見つかった、2)全ての菌サンプルが一種類以上の薬剤に対して耐性を示した、3)分離された菌のうち、72.2%が複数の薬剤に耐性を示した、4)33.7%の農家で乳房炎が発生していた。採血は牛の健康状態を把握する代謝プロファイルテストを行うために実施したが、詳細な分析はこれから行う予定である。 質問表を使ったフィールド調査からは次の点が明らかとなった。1)保険加入農家の飼養規模は非加入農家よりも小さい、2)保険加入農家では搾乳を手で行う農家が多く、非加入農家は機械で行う農家が多い、3)家畜保険加入の決定要因になると思われるリスク選好の分析では、加入と非加入の農家で差は見られなかった、4)同じく家畜保険加入の要因になると思われる、村落における信頼できる人の数では、非加入農家が33.9人、加入農家が24.4人と、加入農家で人数が少ない傾向が確認された、5)時間割引率の分析では家畜保険加入農家は非加入農家と比較して近視眼的傾向が見られることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はハノイ農業大学と共同で進めている。当初の予定よりは少ないが、家畜保険の加入要因に関連する約100戸のベトナム酪農家のフィールド調査を実施することができた。同時に全農家の搾乳牛から採血・ミルクのサンプルも取得することができた。興味深い分析結果も得られつつあり、本研究の当初の目的である獣医畜産融合の研究を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年9月にハノイ農業大学で家畜保険に関する学術セミナーを開催する。これに合わせて調査データの分析を進める。本調査は今後も家畜保険を普及させようとするベトナム政府からの関心も高い。 今年11月にはメキシコで開催される国際獣医疫学経済学会(ISVEE)において、本調査結果について報告予定である。研究分担者である耕野、窪田がAbstractを提出し、受理されている。 今年9月のベトナムでの学術セミナー後に、インドネシアのボゴール大学でも家畜保険に関する学術セミナーを開催する予定である。インドネシアでも家畜保険は実施されているようであり、ベトナムと同様の調査がインドネシアでも実施可能か、事前調査を行う。
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Causes of Carryover |
ベトナムでの酪農家調査は当初200戸程度を予定していたが、家畜保険に加入している農家リストを発見するのが困難であったことと、牛からの採血・ミルクのサンプリングの調査時間も考慮し、約1/2(約100戸)のの調査規模に縮小したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インドネシアでもベトナム同様の調査を予定しており、そのフィールド調査の費用に使用する計画である。
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