2014 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア・オセアニアにおけるオオコウモリ由来新興感染症の出現予測
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25304049
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本道 栄一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30271745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤波 初木 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (60402559)
大松 勉 東京農工大学, 農学部, 講師 (60455392)
前田 健 山口大学, 獣医学部, 教授 (90284273)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オオコウモリ / 長距離飛行 / 病原体 / 感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度研究実施計画に記載した、インドネシアジャワ島ボゴール農業大学で開始したオオコウモリ(Pteropus vampyrus)の追跡調査は、2014年8月に終了した。2014年8月14日を最後にオオコウモリのシグナルが消失したからである。その間の調査では、シグナルは東チモールでも検出されており、ジャワ島のオオコウモリも1000キロを超える飛行を行っている可能性が示唆された。シドニー王立植物園(オーストラリア)のオオコウモリは、ヘンドラウイルス感染症の頻発するクイーンズランドを越え、パプアニューギニアのオオコウモリと交通していると考えられている。今回の我々の結果から、ジャワ島西部のオオコウモリもパプアニューギニアを経由してオーストラリアのオオコウモリと連絡している可能性が示唆された。我々の血清学的調査の結果も考えると、日本脳炎ウイルスおよびヘニパウイルスはインドネシア地域に広く分布している可能性が高い。 前述は主に、夜間のオオコウモリに焦点を当てた行動調査である。病原体をもったオオコウモリが別のオオコウモリ群に入った場合にどのように病原体が広がるのかを推測するには昼間の行動観察を行う必要がある。平成26年度には、タイ王国Po Bangkla寺院で月間に死亡するオオコウモリの計測を行うとともに、攻撃行動、求愛行動などについて資料調査を中心に行った。すると昼間に睡眠をとっているオオコウモリは、年平均で50%強に過ぎず、残りは活発に活動を行っていた。また、本調査地には1haあたり約1万頭のオオコウモリが生息しているが(平均的なサイズのコロニー)、2014年4月からの観察では、月に数頭から20頭までのオオコウモリが墜落したり木に下がったまま死亡した。以上より、オオコウモリ間での病原体の伝搬のみならず、墜落した後に他の動物とも接触すると考えられ、病原体を保有したオオコウモリが群内に入ると素早い速度で病原体は拡散するものと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、東南アジア地区のオオコウモリに焦点を当て、ウイルス感染症がどのように出現するのかその予測を行うことを目的としている。ウイルス感染症の出現予測は非常に難しく、様々な要因を検討していかなければならない。しかし、これまでオオコウモリに焦点をあててこのような試みはなされてこなかった。西アフリカで突如発生して2万人以上の死者を出したエボラ出血熱のようなことを東南アジアで起こさないためにはどうしたらよいのか?平成26年度の研究では、標準的な大きさのコロニーを持つオオコウモリ集団を解析し、どのよな頻度で死亡し、どのようにオオコウモリ間、もしくはオオコウモリー他の動物種間で病原体の伝搬が起こるのかについて多くの知見を得た。また、タイやフィピン、オーストラリア、パプアニューギニアのオオコウモリと同様、インドネシアのオオコウモリも1000キロを超える長距離飛行が可能であり、一度東南アジア地区に危険な病原体が侵入すれば飛散範囲は非常に大きくなることも明らかとなってきた。このように、未知だった東南アジアでの危険な感染症キャリアの動態を次第に明らかにしつつあり、研究全体の困難さから鑑みても、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、インドネシアにおいてオオコウモリの夜間行動の調査、タイにおける昼間の行動調査を中心に行った。タイのオオコウモリは、昼間の行動調査が非常にやりやすい。なぜなら、非常にアクセスのしやすい寺院内に数千から数万頭規模で生息しているからである。一方、インドネシアやフィリピンではこのような駆け込み寺は存在せず、昼間の行動はタイとはずいぶん異なるに違いない。この点に注意して、平成27年度にはインドネシアやフィリピンでの昼間の行動観察を重点的に行うとともに、それぞれのオオコウモリに対しての血清学的調査を推進する。
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Causes of Carryover |
当初、Argos発信機の寿命(破損、動物の死亡を含む)を短く見積もっていたが、実際は半年以上にわたって機能したため、新たに購入する必要がなくなった。また、インドネシアボゴール農業大学にて予想以上に、試薬の分与および研究補助が無料で受けられたため、見積もったほどの費用がかからなかった。一方、次年度にはさらに進んだ血清学的調査も計画しているので本年度以上に予算がかかるものと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、血清学的調査にかかわる試薬および器具といった消耗品に使用する。
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Research Products
(12 results)