2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナイジェリア南東部で流行するラッサ熱の分子疫学・病態解析と迅速診断法の開発
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25305016
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安田 二朗 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (10282518)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラッサ熱 / ラッサウイルス / ナイジェリア / 国際研究者交流 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ナイジェリア南東部はラッサ熱の発生が非常に多い地域の一つであり、その致死率も他の地域に比べて著しく高い。本研究では、その原因を究明するためにナイジェリア大学研修病院との共同研究でこの地域に蔓延するラッサウイルスの分子疫学的解析を行っている。 本年度は2013年と2014年にラッサ熱疑い患者から採取した血液検体の解析を行った。RT-PCR検査を行った結果、2013年の血清10検体のうち1検体、2014年の血清41検体のうち16検体がラッサウイルス陽性であった。陽性例について全遺伝子解析を行った結果、2013年の株は2008年に分離されたNig08-04株と99%の相同性(99塩基、17アミノ酸の相違)が確認された。2014年の株については13株がNig08-04株と相同性が高く、3株が2005年に分離されたNig05-SE40株、Nig05-SE43株と相同性が高いことが明らかになった(91-92%)。これらの成績は、この地域で数系統のウイルス株が良く保存された形で自然界において長期間にわたり維持されていることを示した。 また、2014年のラッサウイルス陽性8検体について次世代シーケンサー解析を行った結果、2検体から腸管出血性大腸菌E. coli O157:H7の遺伝子が検出された。このことが、この地域におけるラッサ熱の致死率の高さと関連している可能性が考えられるため、現在更に詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年および21014年にナイジェリア大学研修病院でラッサ熱疑い患者から採取された51の血液検体についてRT-PCR検査を行った結果、17のラッサウイルス陽性例を得ることができた。続いて、これらのウイルスの全遺伝子配列を解読し、遺伝子データベースに登録されている既知のラッサウイルス株の遺伝子との比較解析を行うことで当初の計画通り遺伝子系統分類を行うことができた。 さらに、2014年のラッサウイルス陽性8検体について次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行った結果、2検体から腸管出血性大腸菌E. coli O157:H7の遺伝子が検出された。この結果は、腸管出血性大腸菌E. coli O157:H7がこの地域におけるラッサ熱の致死率の高さと関連している可能性を示唆するものであり、今後の詳細な解析により本研究目的の達成が期待される。 以上の成績は、本研究の方法論の妥当性を示すものであり、概ね当初の計画通り研究が進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は検体数をさらに増やすことにより、より詳細なウイルス遺伝子系統解析を進めるとともに、陽性検体及び陰性検体の次世代シーケンサー解析を行うことにより、ラッサ熱様症状を引き起こす他の病原体の同定やラッサ熱の病態の増悪化に関与する他の病原体等の同定を行う。さらに、重症患者で顕著に発現変化が認められるサイトカインあるいは遺伝子群を明らかにすることによりラッサ熱の病態の解明を目指す。 これまでの研究において現地でのサンプル調製法に一部問題があり、次世代シーケンサー解析に進めない検体例もあったため、現地でのサンプル調製法の再検証も行う。
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Causes of Carryover |
予定していた物品の納品が年度内に間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の物品費として使用する。
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Research Products
(1 results)