2014 Fiscal Year Annual Research Report
北部ベトナムにおけるコミュニティを基盤とした網羅的下痢症の疫学的研究
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25305031
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山城 哲 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (00244335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋爪 真弘 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30448500)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 下痢症 / 疫学 / 住民基盤 / コホート / 熱帯微生物学 / 感染症 / ベトナム / 起炎微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムでは年間約10,000人の5歳未満の小児が下痢症により命を落とすと推定され、同疾患による社会損失は年間約450万米ドルと推定されており、下痢症の及ぼす影響は大きい。平成25年度においては本研究の基盤をほぼ確立した。すなわち、日越双方による倫理委員会の承認、研究実施地域の選定、25カテゴリーにおよぶ下痢起炎微生物決定法の確立、コミュニティーヘルスセンターを中心とする下痢症検体および関連疫学情報の収集体制の確立およびその記録方法の確立等である。 それらを基盤とし、平成26年度においてはナムディン省ヒエンカインコミューン(2133世帯)のうち、5歳未満の小児を持つ435世帯より無作為に300世帯(約2,225人)を、調査対象世帯および住民とした。研究補助員が15-20世帯を担当することとし、1週間に一度対象世帯を訪問し、構成員中の下痢症発生者の有無を確認して、下痢患者がいる際には下痢検体を採取し、週に2回程度の頻度で研究室に運搬した。本年度は下痢症検体185検体が集積され、そのうち41検体より下痢原性大腸菌が分離された。他の下痢症細菌、胃腸炎ウイルス、下痢性原虫の検索を現在実施中である。 同時に、上記300世帯より無作為に105世帯(471人)を選定し、通常便におけるいわゆる起炎微生物の検出調査を併せて実施した。これは下痢便と通常便との間で、いわゆる下痢症細菌、胃腸炎ウイルス、下痢性原虫の検出率を比較するのが目的である。その結果、研究対象住民において通常便時における下痢原性微生物の検出率は下痢原性大腸菌が約8.4%、サルモネラ菌が約1%、カンピロバクターが0.2%、クロストリジウムが7.6%、ジアルジアが1.7%、クリプトスポリジウムが2.3%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究対象住民の、下痢症時における下痢検体および関連疫学情報が収集されており、下痢起炎微生物の検出が現在のところ順調に進んでいる。それに加えて、同住民471人(105世帯)の通常時の便(非下痢症時の便)を採取し、いわゆる比較のための対象データとした。その結果、下痢原性細菌、胃腸炎ウイルス、下痢原性原虫の陽性率が判明した。その中でも下痢原性原虫のジアルジアが1.7%、クリプトスポリジウムが2.3%と、東南アジア地域における農村地域住民の同原虫の浸淫状況が明確となった。疫学情報解析の結果、同地域においては、ジアルジア感染は家畜の保有と、クリプトスポリジウム感染は生野菜を天水にて洗浄する行動と関連があることが疫学的に証明された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も昨年度同様に研究活動を実施する。すなわち、研究補助員が割り当てられた世帯を1週間に1度訪問し、下痢症の有無の確認、検体収集、疫学情報収集を行う。得られた検体は、これまで同様に、下痢原性細菌、胃腸炎ウイルス、下痢原性原虫の検出を試み、同時に疫学情報との関連より、それぞれの下痢症の危険因子を推定する。下痢症検体において得られた情報と、同対象地域住民における非下痢性便より検出された微生物とを比較し、より詳細な情報を解析する。上記の活動をより円滑にするため、月に1度研究補助員を集めたミーティングをナムディン省ヒエンカインコミューンのコミュニティセンターにて実施してきたが、今年度もそれを継続する。 今年度は研究実施の最終年度となるので、解析した結果をまとめて、学会および論文等に発表する。
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Causes of Carryover |
本研究は北部ベトナムナムディン省にて実施されている疫学研究である。研究補助員等が使用する消耗品等を現地で数多く調達する必要があるが、通貨の為替変動等により若干の繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文房具等、研究補助用消耗品の購入を中心に執行する予定である。
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Research Products
(1 results)