2015 Fiscal Year Annual Research Report
和算で扱われた計算幾何学問題に対する現代的解法の研究
Project/Area Number |
25330006
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森継 修一 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (50220075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 計算幾何 / 数式処理 / 和算 |
Outline of Annual Research Achievements |
「円内接多角形問題における面積公式と半径公式、およびそれらを統合した公式の関係」についての研究に引き続き取り組んだ。これは、「円に内接するn角形の各辺の長さをa1,...,anとするとき、その面積S・外接円の半径R、およびSとRの関係をa1,...anで表す」という古典的な幾何学の問題である。三角形・四角形については、面積公式・半径公式が7世紀までに知られていて、それらを統合した公式もほぼ自明であった。 これに対し、五角形に関する面積公式・半径公式が具体的に求められたのは20世紀末である。ただし、西欧数学とは独立に、江戸時代の日本の数学(和算)では、17世紀後半に半径公式を正確に求めており、「終結式による変数消去」のアルゴリズムが世界に先駆けて確立されていた。本研究はこの事実を踏まえ、同アルゴリズムを現代的な数式処理における計算法に適用して、新たな公式の発見に取り組むことを目的としていた。 本研究の最大の成果は、「五角形と六角形における、面積と半径の関係を表す公式(統合公式)」を世界で初めて具体的に計算して示したことである。正式な論文が2015年9月に公刊されたことにより、上記の7世紀の結果(n=3,4)以来1300年間未解決だった「n=5,6に対する円内接多角形問題」の完全解決がもたらされたことになる。 さらに2015年度においては、統合公式の計算の過程で得られた知見から、アルゴリズムの工夫と数式処理システムの特性を生かした巧妙なプログラミングによって、主として半径公式を対象とした研究を進めた。結果として、n=6,7の場合の計算の効率化、およびより簡潔な公式表現の導出に成功したことに加え、n=8に対するメモリ使用量を抑えた新たなプログラムの開発と計算の実行が継続中である。
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