2013 Fiscal Year Research-status Report
離散事象システムのモデルレス故障診断法に関する研究
Project/Area Number |
25330011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
平石 邦彦 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (40251970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 離散事象システム / 故障診断 / 異常検出 / イベントログ / 時系列データ |
Research Abstract |
離散事象システムの故障診断については,従来から数多くの理論および応用研究が行われてきた.それらの中で観測したイベント列から故障の発生を推定する「診断器」を,あらかじめ与えたシステムモデルから構成するモデルベース故障診断が研究の主流である.これに対し,本研究では観測されたイベント列のみを用いてシステムの障害の発生を検出するモデルレス故障診断を提案している.本年度は,以下について検討を行った. 1. イベント列をNグラム(長さNの文字列)に分解し,N-1グラムの後に発生するイベントを条件付き確率の形で推定するNグラムモデルに基づいた故障診断法をすでに提案している.この手法を拡張し,任意の文字列に置き換えることができるワイルドカード文字を条件付確率で用いるN-1グラムに導入し,コンカレントシステムにおいて発生するインターリーブしたイベント列に対して有効に働くことを計算機実験で確認した. 2. タイムスタンプ付のイベント列が与えられたときに,時間情報を故障診断に利用する方法について検討した.各作業の開始および終了はそれぞれイベントとして記録されるが,作業の継続時間の長短により,イベント記号自体を別のものに置き換える処理を行うことを提案し,実データの解析に適用した. 3. イベント列全体から故障を診断するだけでなく,時系列上で障害が発生した時点を推測する方法について検討した.イベント列上に出現するNグラムの出現数について,期待値と実測値の対数比をそのNグラムの特異度と定義し,特異度が高いNグラムは何らかの障害に対応しているものであると推測する手法を提案した.手法を人間の行動ログデータに適用し,有効性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度計画の項目 (1) イベントの発生順序のみを用いた故障診断法の開発,および,(2) イベントのタイムスタンプを考慮した故障診断法の開発,について研究を実施し,一定の成果を得た.さらに,当初計画にない新たな発展として,障害発生時点の推定方法および人間の行動ログにおける異常動作検知への応用についても検討し,提案手法の有効性を確認することができた.得られた成果は年度内に2件の国際会議(IFIP/IEEE IM2013 Workshop DANMS2013, IEEE CogSIMA2014)で発表し,さらに1件の国際会議(IFAC WODES2014)に投稿し採択された.また,電子情報通信学会英文論文誌にも投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
類似研究としてデータマイニングにおける異常検出(anomaly detection)の研究があり,特に,時系列の記号データからの異常検出の考えが非常に近いことを,国際会議投稿時の査読者より指摘された.可変長のイベント発生履歴に対する条件付き確率を表現するためのデータ構造であるprobabilistic suffix treeの考えは提案課題においても有効であると考えられる.現在,サーベイを行っているところであり,今後の研究に活用したい.これ以外は,当初の計画どおり研究を遂行する予定である.また,今までは,手法の正当性を確認する目的で,意図的に障害の発生を埋め込んだシミュレーションモデルをイベントログの発生に用いていたが,今後は実システムのイベントログにも提案手法を適用する計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究が当初の計画より進展したため,H25年度に2回の国際会議発表を行い,またH26年度には2~3回程度の国際会議発表を予定している.このため,H25年度に予定していた計算機購入の計画を変更し,H26年度に予算状況により適切な仕様の計算機を購入することとした. H26年度に80万円程度のハイパフォーマンスPCおよびソフトウェアを購入する.成果発表のため2~3回程度の海外出張を行う.
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