2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25330017
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
斎藤 明 日本大学, 文理学部, 教授 (90186924)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グラフ / 禁止部分グラフ / 頂点彩色 / 縮約 / スター / 離散数学 / 組合せ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,個々の禁止部分グラフ研究の背後に潜む共通原理を明らかにし、研究全体に通用する標準的な手法を開発することを目指している。平成25年度の研究では、スターと呼ばれるグラフが、従来の研究に共通して現れることを突き止めた。この結果を受け、本年度はグラフの頂点彩色について同様の共通性が現れるかを調べ、また禁止部分グラフの研究で共通に利用できる reduction が存在するかどうかを調べた。 グラフの頂点彩色とは、隣接する頂点が同じ色を与えられることがないように、すべての頂点に色を与える問題である。特に近年は既に一部の頂点に色が与えられている状況から彩色を行う pre-coloring と呼ばる問題が研究されている。本研究も pre-coloring に焦点を当てた。pre-coloring の問題では、既に色を与えられている頂点の距離が互いに4以上離れていると、定数色を新たに用いることでそれをグラフの頂点全体の彩色に拡張されることが知られている。本研究ではこれらの頂点対に距離が 4 未満のものが含まれている状況を調べた。その結果、距離が3である頂点対についてはその数の平方根に、距離が2である頂点対については、その数に比例した色数が必要となることが判明した。距離2の頂点対の数はスターの大きさと密接に関連し、頂点彩色においてもスターが状況に深く絡んでいることが分かった。 グラフの reduction においては縮約操作を考えた。縮約とはグラフの隣接する2頂点を同一視する操作である。スターはその大きさに比例した独立点(互いに非隣接な頂点)の集合を持つので、まずは独立数を保存するような縮約を許す辺の存在を調べた。その結果、そのような辺を持たないグラフを特徴付けることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究ではスターと呼ばれるグラフの振る舞いが共通に現れていたので、本年度の研究でもスターの重要性が浮き彫りとなることが期待されていた。 研究の結果、頂点彩色の問題で pre-color されている頂点の距離と、新たに必要となる色数の関係が明らかになった。特に距離が2である頂点対はスターに対応しており、研究を始める前に立てていた仮説が裏付けられた。pre-coloring の問題については、色数とスターの関係が完全に解明され、この点での達成度は十分なものがある。研究の副産物として、距離が3であるペアの数と必要となる色数の関係も得られた。 一方縮約については、独立数を保ったまま縮約できる辺を持つグラフと持たないグラフを完全に分類した。これも大きい進展である。独立数を保存したまま縮約できる辺を持たないグラフは特殊な2部グラフであり、多項式時間で認識できる。グラフの独立数を求める問題が NP-困難であることを考えると、これは興味深い知見である。 これまでの研究において、標準的な手法の確立のために必要なグラフがスターであることはほぼ解明された。本課題研究申請時に提出した調書の最初の目的のうち「禁止部分グラフにおける標準的手法の開発」、「手法に用いられるグラフの無限系列の拡充」はほぼ達成された。一方3番目の目標である「禁止部分グラフによる研究と相性の良いグラフの性質の特定」についてはまだ未開拓である。グラフの性質には、頂点彩色と独立数以外にも多くのものがあるので、さらなる研究を要する。 以上のように本研究は、当初の2年間に達成しようとしてた内容を達成し、一方3年目以降の研究計画に踏み込んでいるとはいえない。以上の状況から本研究の達成度は「(2)おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の達成度を踏まえ、今後は第3の研究目的である「禁止部分グラフによる研究と相性の良いグラフの性質の特定」を進める。グラフの因子は、一般的には禁止部分グラフと相性が良いとされているが、拡張可能性については例外と考えられている。拡張可能性とはグラフの一部の独立辺が既に指定されているときに、それらを含むような完全マッチングの存在を論じる問題である。拡張可能性については、禁止部分グラフとの関連を論じた研究が少ない。拡張可能性の背後に禁止部分グラフからのアプローチを妨げる要素があるのかどうかをまずは調べていきたい。 また因子と禁止部分グラフの相性を良さを利用して、2-因子と禁止部分グラフの研究を深く進めてみようとも考えている。2-因子の存在について、これまで2つのグラフを禁止した状況は完全に解明されている。しかし3つのグラフを禁止すると状況は複雑になり、状況の解明が進んでいない。本研究代表者はこれまでの研究で禁止部分グラフに関する知識を深めているので、これらを利用して3つのグラフを禁止した2-因子の問題を解決し、本研究課題である「禁止部分グラフにおける標準的な研究手法」の有効性を立証したい。 一方本年度の結果から派生した問題にも考察を加えたい。「達成度」の項にも書いたように、pre-coloring の結果では、必要となる色数の上界が距離 3 のペアの数の平方根のオーダーで変化する。なぜ平方根のオーダーなのか、研究の感触が残る今のうちに調べたい。 また縮約に関しても疑問を残す。縮約に関して独立数が臨界的な状況にある(どの辺を縮約しても独立数が減少する)かどうかは多項式で判定できるが、独立数を求めること自体は NP-困難である。もしかすると独立数を求めることの難しさの本質の一端が、この状況の中に隠されているのかもしれない。この点もぜひ調べてみたい。
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Causes of Carryover |
為替レート、航空運賃は変動するため、計画当初に海外旅費を正確に見積もることは難しい。今年度は海外旅費に予想以上の費用がかかった。そのため物品購入、特に外国雑誌の購入を控えた(雑誌購入のレートは昨年に決定し固定されるので、予測は難しくなかった)。その結果、当初の支出予定額内に支出を抑えることには成功したが、若干の未使用額が出てしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
為替レートや航空運賃の変動により、海外旅費の使用額見積もりは引き続き難しい。また次年度は研究3年目として、旅費の使用が多くなると予想している。具体的には次年度請求額の 1,200,000 円のうち、900,000 円を旅費に、100,000円を国際会議登録料に、200,000円を物品購入に充てる予定である。今回生じた 3,604円は当初予定からの変動を埋め合わせるために使用される。
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Research Products
(6 results)