2013 Fiscal Year Research-status Report
生態リスク評価の緻密化と環境識別問題に対するベイズ的接近
Project/Area Number |
25330051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
柏木 宣久 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50150032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 邦夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60110946)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベイズ統計 / 方向統計学 / 環境科学 / 生態リスク評価 / 発生源解析 |
Research Abstract |
生態リスク評価については、急性毒性(半数影響濃度、EC50)と慢性毒性(無影響濃度、NOEC)の関数関係について検討した。最も合理的な生態リスク評価方法であるEPAFの計算には種の感受性を使うが、種の感受性は慢性毒性データに基づき同定される。しかし、慢性毒性データの取得にはかなりのコストが掛かる。コストを削減する方策として、相対的にコストの安い急性毒性データの利用が考えられる。実際、急性毒性から慢性毒性を予測する方法は既に実用化されている。ただし、予測方式として従来は急性慢性毒性比が利用されてきた。この予測方式は急性毒性と慢性毒性の比例関係を前提にしている。そこで、藻類、ミジンコ、および魚類の様々な化学物質に対する急性毒性と慢性毒性のデータを用いて、前提の妥当性について調べた。その結果、藻類、ミジンコ、魚類の何れでも、両毒性間に比例関係は認められなかった。化学物質を難分解性と良分解性に分けても同様の結論であった。そして、両毒性間のより合理的な関係は、対数線形関係であるのが分かった。 発生源解析については、本来的には識別不能な未確認発生源に関する推論を可能にするため開発したベイズ的方法の精度向上について検討した。従来は事前分布として一様分布を仮定していたため、真値が小さいと推定値は過大になり、逆に真値が大きいと推定値は過小になるという系統的な偏りが生じていた。この系統的な偏りを減少させるため、推定された事後分布を事前分布として使用し再度推定する経験ベイズ的方法について考察した。 方向統計学については、理論的考察を行い、特に分布理論を展開する一方で、環境、海洋、地震といった分野への応用について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生態リスク評価については、本年度の目的であった、急性毒性と慢性毒性の関数関係を特定できた。慢性毒性に関する観測誤差を含むデータと予測誤差を含む予測値が混在した状況下で種の感受性を同定する方法についても考察を実施した。 発生源解析については、本年度の目的であった、バイアスを低減させる事前分布の開発について考察を実施した。時間情報を組み入れたベイズ的方法については、方法の開発までは至らなかったが、遅れていたデータの取得を年度内に完了できたので、問題ないと考えている。 方向統計学については、想定以上に進展し、十分な業績をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
生態リスク評価については、研究協力者による生態毒性試験に関わる生物統計手法の標準化が遅れており、進展に影響が出る可能性がある。遅れのために研究代表者に余力が生じた場合は、余力を他の研究者から協力を依頼されている別の環境統計分析に振り向ける考えである。 発生源解析については、研究協力者の組織化が更に進んでおり、目的達成に向け順調な進展が期待できる。 方向統計学についても、実績を考えれば、極めて順調な進展が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が少額であり、翌年度分と併せて有効に利用しようと考えたため。 不足する費目に充当する。
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Research Products
(13 results)