2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチスレッドプログラムの実行時間と消費エネルギーを削減するスケジューリング機構
Project/Area Number |
25330084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日下部 茂 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (70234416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マルチスレッド処理 / スケジューラ / 省エネルギー技術 |
Research Abstract |
高クロック化の消費電力問題や命令レベル並列処理の限界などからスレッドレベル並列処理が着目され、その実行最適化の重要性は増している。研究代表者は、これまでの研究により、スレッドスケジューリング方式を改良することで、実行時間の短縮だけでなく消費電力の削減が汎用のプラットフォームでも実現できるとの見込みを得ていた。本研究は、これまでの成果を発展させ、マルチスレッドアプリケーション実行時に省エネルギー化と実行時間短縮を自律的に両立させる、汎用計算機システム向きスケジューリング機構を探究することを目的とする。具体的には、(1)マルチスレッド処理時に実行時間短縮や消費電力削減と関連を持つシステム内イベントの特定、(2)対象イベントの発生状況をモニタリングしながらスケジューリング機構の動作を最適制御し自動的な実行時間短縮や消費電力削減を実現するヘルパースレッドの構築、といった研究を行う。 平成25年度は、スレッドスケジューリングのフレームワークのプロトタイプを構築し予備評価を行った。フレームワークは、カーネルレベルのスレッドスケジューラとそのAPI、ヘルパースレッドからなる。ヘルパースレッドは、着目するシステム内イベントのデータを基に期待する振舞を実現するための制御用パラメータの値を決定し、APIを通してその値をスケジューラに設定する。スケジューリングにおいては、共通の親プロセスを持つスレッドは多くの実行時コンテクストを共有しており、その集約実行がメモリ階層の有効活用を可能にし、実行時間の短縮や消費電力の削減につながると仮定した。平成25年度の予備実験では、主にキャッシュのミスを少なくするスケジューリングを実現するような方針の下、実験、評価を行った。一定の効果を確認した一方、課題も明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の予備実験では、スケジューリング機構のオーバヘッド、アプリケーションとシステムの振舞を分析し制御するヘルパースレッドのオーバヘッド、実際の性能向上を中心に測定した。独自のスケジューリング機構を導入したことによるスケジューラのオーバヘッドは1%以下で実現方式に課題はないと考える。その一方、分析・制御を行うヘルパースレッドのオーバヘッド、および実際に得られた性能向上に関する予備評価から今後取り組むべき課題を抽出した。予備実験を行ったバージョンでは、ヘルパースレッドの主要部分は以下のものであった: 1)実行中の観測データの採取、2)採取したデータへのアクセス、3)データを分析し望ましい振舞のために変更すべきパラメータ値の決定、4)スケジューラへの新しいパラメータ値の設定。このうち、1)と3)の部分が、オーバヘッドが大きい、効果的な分析が行えていない、といった観点で重点的に取り組む必要があることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
予備評価の結果から、プロトタイプとして作成したスレッドスケジューリングのフレームワークのうち、ヘルパースレッドの1)と3)の部分の課題を解決する必要があると判断した。そのうち、1)実行中に観測するデータの採取に関して、現在はOprofileというツールを用いてプロセッサ内イベントを採取しており、そのオーバヘッドの大きさが問題となっている。そのため、同様のイベントをより軽量に採取する方法について研究を行う。3)については、スケジューリングのパラメータの値と振舞を代表する観測データとの関係をモデル化し、より好ましい振舞につながる値の推定をより軽量に計算できる方式について研究する。 3)で用いる観測データは1)のデータ採取の問題と密接に関係するため、1)と3)は連携して行う予定である。現行方式の1)および3)をベースとして改良を行うだけでは課題が解決しない可能性もあるため、1)で現在観測しているイベントと異なるデータを観測し、3)もそれに合わせて再構築するといったより上位の観点からの変更も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予備評価の結果、方式の再検討の必要性が生じ、計画していた実験サブシステムの構築を延期したため。 再検討の結果を踏まえて、構築を延期した実験サブシステム用の物品を購入する予定。
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