格子問題に基づく暗号プリミティブの構成法に関する研究

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25330152
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Kansai University
• Principal Investigator: 桑門 秀典 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30283914)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 廣瀬 勝一 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20228836)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 暗号 / 格子 / 安全性 / 最短ベクトル問題

Research Abstract

帰着技術の調査検討：帰着技術に関する最新の文献を調査し，その内容を精査した．従来の帰着手法と比較して，最近考案された確率分布を用いた帰着手法は，証明の見通しがよくなることがわかった．
実装状況の調査：格子問題を解く有力なアルゴリズムであるBKZとその関連アルゴリズムを調査した．これらのアルゴリズムの改良が盛んに行われているが，理論的な改良よりもヒューリスティックな改良の積み重ねにより成果をあげていることがわかった．格子問題に基づく方式は，一般に基底のサイズが大きく，それが実装時の問題になりやすい．これを解決するために，基底に代数構造の一つであるイデアルを導入することにより，基底を記憶するためのメモリサイズを削減することが行われる．これにより，メモリサイズは大幅に小さくできるが，他のハッシュ関数と比較すると，さらなる削減が必要であることが判明した．
ハッシュ関数の構成法の検討：既存方式であるハッシュ関数SWIFFTXのアルゴリズムを精査し，安全性の根拠となっている格子の基底ベクトルを導出した．イデアルの典型的な実現方法である巡回基底とランダムな基底を識別する既存アルゴリズムを調査し，SWIFFTXの基底への適用を検討したが，複数の巡回基底を使用するSWIFFTXには適用が難しいことが判明した．また，SWIFFTXの擬似ランダム関数との識別攻撃を検討した．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

巡回構造をもつ格子基底における最短ベクトル問題及びその類似問題を解く平均計算量がそれの最悪計算量と同じオーダーになることを証明する帰着技法が新しく開発され，それの文献収集及び技法の解析に時間を要した．新しく開発された技法は，従来の技法よりも証明の見通しがよくなるので，これらの知見を得たことは有意義である．また，格子の最短ベクトル問題を解くアルゴリズムであるBKZ及びその関連アルゴリズムを解析し，相互関係を明らかにするために時間を要した．これらのアルゴリズムは，理論的根拠が明確でない，ヒューリスティックな部分が重要な役割を果たしており，それに理論的根拠を与えることは研究課題の一つになり得ることが判明した．上述の帰着技法の調査及びBKZ関連アルゴリズムの解析らは，本研究目的であるハッシュ関数の構成法の検討に必要なことなので，省略することができず，結果として，計画よりもハッシュ関数の構成法の検討に着手することが遅れる要因となった．帰着技法の調査やBKZ関連アルゴリズムの調査は継続的に実施する必要があるが，平成25年度に丁寧に行ったので，今後は研究効率がかなり改善すると思われる．

Strategy for Future Research Activity

平成25年度に実施した帰着技術に関する調査検討，格子問題を解くアルゴリズムに関する調査検討は継続して実施する．暗号プリミティブに用いられている格子問題が計算量理論において困難と予想されるNP困難な問題に帰着することは自明ではなく，真に困難であるか不明である．そのためには，格子問題を解くアルゴリズムの調査検討が必要である．平成26年度は，平成25年度に終了できなかった既存のハッシュ関数SWIFFTXの安全性の検討から着手する．そして，当初予定したSWIFFTXの改良を実施する．

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

購入予定物品の発売時期が延期されたため，平成25年度内に購入することができなかった．校務の都合により，予定していた学術会議に出席することができなかった．
購入予定物品が平成26年4月に発売されたので，平成26年度に購入する計画である．物品費では，それ以外に大きな支出は予定していない．旅費については，昨年度の繰り越し分と合わせて国外の学術会議に2回，国内の学術会議に3回出席する予定である．その他の支出としては，平成25年度にレンタルを開始した計算機の継続利用料に支出する他，論文別刷りや学会参加費等への支出を計画している．