2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25330156
|
Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
白勢 政明 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (70530757)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | メニーコア・コプロセッサ / 楕円曲線暗号 / ペアリング暗号 / AES / 並列実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,一昨年に市場流通を開始したメニ―コア・コプロセッサに適化した暗号並列実装法を提案することである.より具体的に本研究では,公開鍵暗号の長所(鍵管理の容易性)と共通鍵暗号の長所(処理の高速性)を有するハイブリッド暗号を実装対象とし,数十あるコアを最大限に利用する多重並列性処理,GPGPUとは異なる(汎用CPUコアとのアーキテクチャの類似性,多倍長整数演算やAES暗号処理をサポートする組込み関数,最先端微細化技術の採用といった)コプロセッサの特性の活用,(不要なメモリアクセス,データ依存に起因するハザードといった)冗長処理を削減することで,処理の高速性,低消費電力性,実装容易性を有するメニ―コア・コプロセッサに適化した暗号実装を達成させる. 平成26年度は,平成25年度に提案した2つの公開鍵暗号アルゴリズムの改良(1)と,共通鍵暗号AESの並列実装(2)に焦点をあてた. (1)については,2次曲線を利用したペアリング暗号アルゴリズムにおいて座標移動技法を採用することでの計算コストの削減と,一点の座標を特殊な形にさせることで楕円曲線暗号の計算コストを削減する手法を二点に適用させることで更なる計算コストの削減を達成した. (2)については,電子図書のような複数ファイルの暗号化の必要性を想定し,メニ―コア・コプロセッサを実装対象とする共通鍵暗号AESのOpenMPによる並列実装しデッドロックに類似した現象が生じる問題点を発見した. また,現時点では成功はしなかったものの素因数分解楕円曲線法(ECM)アルゴリズムのメモリレス化を考察した.ECMアルゴリズムはRSA暗号の安全性解析に関係しており,ECMアルゴリズムのメニーコア・コプロセッサへの並列実装は,プログラムの並列化の容易性という点では適しており,メモリ消費量の多さという点では不適である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において,暗号アルゴリズムの改良はいくつかの成果が得られており,楕円曲線暗号アルゴリズムについては座標変換を利用する手法を提案し,ペアリング暗号アルゴリズムについては2次曲線と楕円曲線の交点を利用する手法を提案し,本研究はこれらの暗号の計算コストの削減に貢献できた.また,暗号のメニーコア・コプロセッサへの実装という目標については,共通鍵暗号のみであるが実験的実装を行い課題も明らかとなった.しかしながら,当初の予定である公開鍵暗号と共通鍵暗号を含むハイブリッド暗号の実装には至らなかった. その理由として,公開鍵暗号のハードウェアへの並列実装の手段として知られているRNSが,メニーコア・コプロセッサへの実装には適さなかったこと,結果的に成果の出なかったECMアルゴリズムのメモリレス化に時間を割いてしまったことが挙げられる.また,当初は楕円曲線暗号やペアリング暗号のような公開鍵暗号の並列化を本研究の主目的としていたが,本研究を通じてAESのような共通鍵暗号が並列実装により適していることが判明し,目標を細かい部分で変更した. 以上より,やや遅れている,という自己評価となる. 但し,メニーコア・コプロセッサへのプログラミングは,流通開始して間もない頃は情報が少なく不確実な事柄が多かったが,現在は十分な調査ができており本年度はハイブリッド暗号の並列実装に十分専念できる状態となっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
メニーコア・コプロセッサへの,RSA暗号の安全性解析のためのECMアルゴリズムの並列実装と,ハイブリッド暗号の並列実装法を確立し,実装評価を行う. ECMアルゴリズムの実装については,昨年度成功しなかったメモリレス化の研究も引き続き行ないたいが,本年度に成功するかどうか予測できないため,既存のECMアルゴリズムの実装も並行して実施しメモリ消費量,スレッド数,計算時間短縮の関係を集約する.ECMアルゴリズムのメモリレス化に成功した場合は,このアルゴリズムを実装及び評価を行う. 実際のファイルのハイブリッド暗号での暗号処理では,公開鍵暗号は数百から数千バイト程度の共通鍵暗号の鍵の暗号処理に用いられ,ファイルの暗号処理には共通鍵暗号が使用される.従って,ハイブリッド暗号においては,一般には公開鍵暗号の高速化より共通鍵暗号の高速化が影響が大きい.そのため,並列化の対象を公開鍵暗号から共通鍵暗号に重点を置くことにし,昨年度はOpenMPを利用してAESを並列化したが,今年度はpthreadやCilk Plusを利用しての並列化を行う. メニーコア・コプロセッサによる暗号処理の高速化の実対象として電子書籍を考慮っしたい.電子書籍フォーマットの一つであるEPUBでは,文章データは章または段落毎に一つのファイルにまとめられ,電子出版業界の国際的組織であるInternational Digital Publishing Forumはファイル毎の暗号化を推奨している.従来一つのファイルの並列暗号処理の研究が主流であったが,電子書籍の暗号化では複数ファイルの並列暗号化が意味を持つ.以上より,電子書籍を具体的対象とする実装の容易なメニーコア・コプロセッサへの並列暗号化手法の研究を行う.
|