2014 Fiscal Year Research-status Report
基本多義動詞・形容詞の意味ネットワークとその習得・教育に関する実証的研究
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25330168
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森山 新 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10343170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 新悟 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50346582)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多義語 / 類義語 / 基本動詞 / 意味構造 / 内省 / 心理実験 / コーパス分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、多義語研究の方法論の整備を行った。第一に、内省による分析では、これまで中心義(プロトタイプ義)の認定、語義の記述、語義数の決定、拡張の動機づけの決定などに問題を残していたことから、これらについて分析方法の整備を行った。第二に、心理実験では、多次元尺度解析を行った際に、よい数値が得られないことが多いことから、カード分類法の問題点や改善策について考察した。第三に、コーパスにおいては、現在、共起する項(特にヲ格)によって意味分類を行うことが多いが、その是非について考察した。また、NLT(Tsukuba Web Copus)の二語比較機能について考察し開発に反映させ、多義でありかつ類義関係にある動詞・形容詞の比較が可能にした。第四に、これまで用いられてきた内省、心理実験、コーパス以外に方法はないかについて考察した。 これらの考察を踏まえ、本動詞の中から「切る」「引く」「見る」「打つ」「上げる」、補助動詞の中から「てくる」などを取り上げ、以下のような研究を実施した。第一に、母語話者を対象とした意味構造を内省・心理実験・コーパスによって明らかにした。第二に、日本語学習者の意味構造分析を心理実験によって明らかにした。第三に多義語の意味構造や語義のプロトタイプ性と習得との相関関係についての研究を行った。第四に学習者の意味構造に及ぼす母語の対応語の意味構造が及ぼす影響(例えば、「切る」の意味構造が「CUT」の意味構造の習得に及ぼす影響など)について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は4月から9月まで研究代表者がサバティカルに入りオーストラリアに滞在、その間、本研究プロジェクトとは異なる研究(オーストラリアやヨーロッパにおける多文化教育)に重点をおいて研究を進めていたことから、本研究に遅れが生じた。また、当初は幅広い動詞・形容詞について多義構造の分析を行う予定であったが、研究を進める中でまずは意味分析の方法論の確立が急務であることを痛感し、そちらを優先したことから、当初計画していた幅広い動詞・形容詞の意味分析に遅れが生じた。 コーパスについてはコーパスの構築は進んだが、システム上のトラブルが発生し、公開ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた意味分析法の研究開発をもとに、様々な多義語の意味分析とその習得について研究を進めていきたい。なお、幅広い動詞・形容詞を扱うと各語の意味分析の精度低下が懸念されることから、今後は主に動詞に絞り、主要な動詞10程度について重点的に研究を進めていく予定である。また、単に意味分析だけでなく、母語・目標言語の意味構造が習得にどのような影響を及ぼすか、教材開発にどのように反映させていくか、などについても考察を進めていく予定である。 コーパス分析においては、今後システムの不具合を調整し、二語比較機能を備えたコーパス検索システムを公開、コロケーション情報をもとに多義語分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
サバティカルでオーストラリアに滞在し、他の研究(オーストラリア・ヨーロッパの多文化教育)を行ったことから、年度前半の本科研研究に遅れが生じたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に前年度の遅れを取り戻す予定である(必要によっては期間延長を考える) 具体的には、これまで進めてきた意味分析法に基づき選定した基本動詞の意味分析、及びそこで明らかになった意味構造が学習者の習得にどのような影響を及ぼすかについての研究、それらの成果を辞書開発などにどのように応用すべきかについての研究を継続する。これらについてすでに明らかになった研究成果については、関連の学会、研究会などで発表をしたり、論文投稿を計画している(現時点では日本認知言語学会、日本言語文化学研究会などでの発表を準備している)。
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