2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25330173
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
河地 庸介 東北福祉大学, 感性福祉研究所, 講師 (20565775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成 烈完 東北福祉大学, 感性福祉研究所, 准教授 (30358816)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感覚情報統合 / 実験心理学 / 脳科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体は、脳内で個別に処理される様々な感覚情報を瞬間的に統合して知覚を生成するとされている。しかし、瞬間的統合の背後にあるダイナミックな心的・脳内過程は十分に検討されていない。本研究では、刺激の瞬間呈示とfMRI 計測を組み合わせて従来の種々の時間的制約を克服し、ミリ秒オーダーで生成される感覚統合知覚の心的・脳内過程を捉える研究を行う。1.昨年度考案した色情報と運動情報を組み合わせた統合刺激の処理・見え方に制限を課すマスキング法をさらに改良し、統合刺激の呈示後にマスクを呈示するまでの時間間隔を変化させて統合知覚が完成するまでの所要時間を測定した。その結果、色・運動情報の各々はおよそ100ミリ秒弱の呈示時間で知覚が生成されるが、色と運動の情報を統合した形で知覚するには200ミリ秒以上の時間を要することが示唆された。この知見は、初期視覚野において各感覚情報を分離せずに処理するのではなく、個別に処理された情報を後に統合する可能性を示唆している。さらに、各感覚情報の顕著性の差異が各情報の処理時間および情報統合に要する時間に及ぼす影響を考慮するために、反応時間パラダイムを構築し、感覚情報の顕著性を調整した上で再度マスキング法による実験を行っている。2.視・聴覚情報を瞬間的に選び出し、分離/統合する方略を検討するために、単一の音刺激と複数の視覚事象が統合して知覚されうるかという問題について通過・反発錯視を用いて実験的に検証した。その結果、音刺激に対して-60ミリ秒から120ミリ秒の範囲に複数の視覚事象が生じた場合には錯視が生じ、視聴覚情報が統合されていることが明らかとなった。生体は常に一対一の視聴覚情報の統合を優先できるわけではなく、状況に応じて一対多の視聴覚統合を行うことが示唆された。この他、fMRIを用いた瞬間的統合過程の検討のため、視覚刺激の呈示時間に応じて変化する脳活動を測定する実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で考案した実験パラダイムにより、個々の感覚情報の処理および統合処理に要する時間を同一実験内で測定し、各処理の所要時間が異なることがわかった。この違いから、感覚情報統合知覚の瞬間的生成過程の検討という研究目的に関連して、統合知覚は単一の心的処理ではなく複数の心的処理過程から成立するという示唆を得ることができた。また本研究の結果と先行研究の知見を考慮することで、初期視覚野から高次脳領域に至る脳内ネットワークの必要性についても示唆を得ることができた。本年度は、推定される複数の心的過程をfMRI実験によって裏付け、本研究の達成度はより高めることを目指す。本研究の成果の一部はすでに論文発表されている。以上より、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,これまで同様に推進する心理物理実験で得られるデータと、MRI実験によって得られる機能的脳画像および構造画像を組み合わせて瞬間的統合の包括的検討を進める。これらの研究成果を研究専門誌に投稿する。
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