2014 Fiscal Year Research-status Report
一夫一妻鳥類をモデルとした利他性の進化起源に関する比較認知研究
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25330175
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (10433731)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 利他性 / 互恵性 / カラス / 比較認知 / 進化 / ストレスホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度11月に若鳥雌雄10羽を新規に追加飼育導入し、群れ内の優劣関係形成と相互はづくろいとの推移関係を継続記録解析を進めた。最終的な結論を得るまでには平成27年度までの継続データ取得が必要であるが、優劣関係の関係の形成と安定化に伴って、相互はづくろいが生じる予備結果を得つつある。この結果はカラス若鳥(特にオス)が、利他的な羽づくろい行動を用いて競合関係を構築・維持している可能性を支持するものであり、今後も引き続きデータ収集と解析を進め、H27年度に発表予定である。 また、メスの存在がオスの相互毛づくろいを促進するかについては、現在環境設定がようやく整いつつあり、平成27年5月にデータ取得を開始する段階に至った。 これと並行して、先行導入した雌雄混成群について、ストレスホルモンであるコルチコスステロンを糞中からEIAによって微量計測し、個体のストレスと順位ならびに性との関連を検証した。その結果、オスでは高順位ほど高ストレス、メスでは低順位ほど高ストレスという順位とストレスの性的逆転関係が見出された。高順位のオスが下位個体に頻繁に利他行動を示すこととそれに要するエネルギーが高ストレスとして反映されている可能性があり、内分泌機構の面からも競争的利他性を支持する結果が得られている。このような順位とストレスの雌雄逆転現象は、社会性動物では初めての発見であり、平成27年度中に論文発表できる段階にきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験は残すところメスの存在によるオスの羽づくろい促進という1点のみというところまで達成しており、また、計画していなかった付随テーマについても「攻撃行動と羽づくろいの長期的推移」ならびに「順位とストレスの性的逆転関係」という結果も得られており概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成27年度は、「メスの存在がオスの相互羽づくろいを促進するか」という実験を行うが、これについては実験環境整備も整いつつあり、5月中には予備データの取得を始め、上半期にはデータ取得を終え、下半期には論文発表する予定であり、当初予定の研究は十分達成できる予定である。
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Causes of Carryover |
実験装置の部品が予定より安価で調達できたため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画を越えて新たな発見のあった内分泌計測にかかる物品費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)