2015 Fiscal Year Annual Research Report
一夫一妻鳥類をモデルとした利他性の進化起源に関する比較認知研究
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25330175
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (10433731)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 利他性 / 互恵性 / カラス / 比較認知 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでに導入した若鳥2群について次の観察・実験を行った。 <1> 群れ内の個体間交渉の長期的推移: 群れの導入初期(半年齢)から2年半にわたって蓄積した個体間社会交渉の観察データについて、本年度、縦断的解析を行った。その結果、① 群れ内の順位は半年をかけて(2年齢の春)までに次第に安定した。② 群れ形成後の数か月は攻撃交渉が比較的多く、羽づくろいなどの宥和交渉は少なかった。③ 2年齢の春から羽づくろいが高頻度で生じ、もっぱらオスから始発した。 <2> 利他行動の発達・社会関係差: 本年度形成されたつがい1組について、非繁殖期においても、頻繁な相互給餌が観察された。そこで、好みの異なる餌2種を与え、給餌パターンを分析した。結果、オスもメスも互いに給餌する互恵性があり、かつ、オスは好ましい餌をメスに多く給餌した。このつがい個体の日常観察データから相互羽づくろいのパターンを分析した結果、給餌と同様に、オス、メス双方とも相手を羽づくろいするものの、オスから行う頻度の方が高かった。非つがい若鳥個体間では、相互給餌は非常に稀であり、羽づくろいは優位オスから劣位オスへ一方向的で互恵性がないことと比較すると、今回得られたつがいの利他行動に関する互恵的かつオス偏重のパターンは、発達あるいは社会関係(つがい)の形成に伴って利他行動が変化することを示す。 <3> 配偶者選択としての利他行動: 若鳥が示す利他行動であるオス同士の羽づくろいの機能について、メスへのアピールの可能性を検証した。オス2個体の状況を設け、隣接ケージにメスあるいはオスを刺激個体として導入し、個体なし条件も加えた3条件で、オス間の羽づくろい頻度を比較した。結果、優位オスから劣位オスへの羽づくろいは、メス隣接条件で、他の条件よりも高頻度で生じた。この結果は、メスの存在がオスの利他行動を促進させること示唆し、上記可能性を支持する。
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Research Products
(12 results)