2014 Fiscal Year Research-status Report
イルカに言葉を教える - イルカにおける命名と文の理解
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25330177
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
村山 司 東海大学, 海洋学部, 教授 (40328109)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シロイルカ / 視覚性人工言語 / 動詞の命名 / 名詞の命名 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず,昨年度までに修得された「音声(鳴音)及び記号による名詞の命名」の確認を行った.すなわち,フィン,マスクの2つの物を対象として,「鳴き分け」(呈示した物に応じて,それぞれの物を示す鳴音を発する),「聞き分け」(鳴音を呈示し,その音が示す物を選択する),「物選択」(記号を呈示し,その記号に対応する物を選択)「記号選択」(呈示された物に対応する記号を選択)の4課題を行った.その結果,ほとんどの課題において有意な正解率を上回る結果となり,被験体はフィンとマスクにおいて,音や記号による名詞の命名を維持していることが確認された.このことが確認できたことにより,次の「動詞の命名」においてフィン,マスクをあらわす記号を用いることが可能であることが裏付けられた. そこで次に「動詞」の命名について実験を行った.動詞は「持ってくる」という動作を学習させることとした.まず,その動作をあらわす記号を被験体に呈示,すぐに続けて物をあらわす記号を呈示して,離れた位置に呈示されているフィン,マスクから,呈示された記号に対応した物を選択して持ってこさせることとした.開始当初は正解率も低く,誤動作も多かった.しかし,試行回数が増えてくるにつれて正解率が上昇していった.また,正解時の試行における選択時間を測定したところ,開始当初は迷った反応が多く,選択に時間を要していたが,正解率の上昇に伴って選択時間が短縮,つまりすばやく正しい「持ってくる」動作をすることができるようになった.最終的には正解率がフィン,マスクともに有意に高くなり,被験体が記号で示された物を離れた距離から選択して「持ってくる」動作を獲得したことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では,本年度までに「動詞の命名」の完成と「目的語の導入」までを予定していたが,実際には,1つの動作だけで,また,最初の段階の「動詞の命名」の最終段階のところで留まっている. その理由として,実験施設(水族館)の水槽工事による長期の中断,水槽内にいる他の個体の体調不良の影響による実験中断などのために,実験期間が大幅に短かった点がある.本研究は対象個体(被験体)が限定されているため,他の個体,他の園館での代用ができず,そのため進捗が大幅に滞っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「記号(図形文字)による動詞の命名」を確立することを主目的とする.ただし,動作が1種類だけでは特定の動作を表出している記号を理解しているとは言えないので,複数の動作を異なる記号で行わせることができるようにすることで,動詞を表出する記号の理解を検証したい. しかしながら,本研究は対象としている個体(被験体)が限定されているため,実験場所,被験体を変えることができない.そのため,実施場所(水族館)の事情や被験体の健康状態等に実験が影響を受けることが懸念される.よって今後は,本研究の目的に深く関連した周辺分野,つまり「模倣」についての実験も取り入れていく予定である.
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Causes of Carryover |
本研究は,イルカ類における人工言語による言語理解の一環として「動詞」を表す図形文字を学習させるものである.しかしながら,これまでの研究でまだその目的の達成には至っていない.従って,次年度はその目標を達成するために,特に「記号(図形文字)による動詞の命名」の完成という最も基本的なことに焦点を当て,引き続き研究を継続する必要がある. また,特にこのテーマをより検証するために,深く関連した周辺事象(「模倣」)についても実験を行わなければならず,それについても次年度に行いたい.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験場所が遠隔地であり,また,実験は長期間にわたって行われるため,実験場所までの旅費,実験のために滞在する滞在費などが必要である.また,実験自体に必要な各種消耗品,実験資材の運搬料等も発生する経費である. このほか,得られた成果を公表する場合の学会参加費,論文とする場合の英文校閲料,投稿料なども必要である.
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