2013 Fiscal Year Research-status Report
高精細度画像が与える奥行き感の実験的解明とその応用
Project/Area Number |
25330196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
矢野 澄男 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (30466239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 奥行き知覚 / 高精細度画像 / 空間周波数 / 運動視差 / 動き知覚 |
Research Abstract |
高精細度画像が与える「奥行き感」に関して,その画像のパラメータに関して着目し,下記の2点に関して研究を進めた. 高精細度画像が与える奥行き感に関して,空間周波数と奥行き感に関して検討を行った.実験では,HDTV画像(4.8インチLCD表示)を用い,視距離9Hから観視し,提示可能な最大空間周波を90cpdとした.基準視標として実物を用い,かつ,シノプターにより両眼視差を非提示とした.評価画像として,実物視標と同じ画像を水平・垂直方向に帯域制限し,評定尺度法により主観評価を行った.その結果,27cpdと45cpd間には有意差は見られなく,63cpdとは有意差が見られ,かつ,63cpdと実物視標には,有意さが見られなかった.これらの結果から,高精細度画像の奥行き感は,約40cpd程度で,実物と遜色のない奥行き感が得られると推測される. 動きを含む平面画像が与える奥行き感に関して,運動視差の評価,解析を行った.画像の生成に関して撮像デバイスを単に平行に運動させる場合,及び,撮像デバイスの光軸を,常に,前方の固視点に固定し,平行に運動させる場合で行った.撮像デバイスの運動の左右距離は6.5cm,運動速度は6.5cm/secである.視標は,スティックを数本立て,スティック間の奥行き距離を評価した.その結果,固視点を設定した運動視差の場合に有意に奥行き感が大きいとの結果となった.解析の結果では,各奥行き視標の撮像デバイス上での変位量は,両方とも変わらないが,変位量の微分値はやや異なるとの結果を得た.一方,視標にかかわる運動知覚は大きく異なり,固視点を設定した運動視差の画像では,明確な「ネッキング運道」が知覚された.これらの要因が奥行き知覚に差異を与えたと推測される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験装置として,高精細度画像用LCD,入力装置,また,運動視差用のカメラ装置等を整えることができた.また,高精細度画像と奥行き感の知覚,運動視差による奥行き知覚等の実験着手,加えて,一部は学会発表ができ,研究計画はおおむね順調に推移していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
高精細度画像が与える奥行き感の要因に関して,さらに検討を進める.これまでの検討結果を踏まえて,平面画像での動きのある場合に関しては,運動視差に着目し,また,高精細度画像の物理パラメータに関しては,主に空間周波数と奥行き知覚に深くかかわると思われる調節機能の関係を検討する. 動きを含む平面画像が与える奥行き感に関して,運動視差による奥行き知覚は,撮像デバイスの光軸を,前方の任意の一点に固定し,水平方向左右に運動させた場合が,単なる水平方向の運動より大きいとの結論を得ている.しかしながら,この結果は,撮像デバイスと頭部運動を同位相で動かせた場合である.実際のディスプレイでは,提示視標と頭部運動の位相が異なる場合も想定される.このように,撮像デバイスと頭部運動を異なる位相で表示,受容した場合の奥行き知覚の変動を実験的に検討する. 高精細度画像での提示画像の空間周波数の変化に伴う調節機能の振る舞いを検討する.これまでの検討で40cpd以上では,解像度の向上に伴う主観的な奥行き知覚の向上は認められないことから,これよりも低い解像度を対象とする.検討は,ステップ応答的に静止画を提示した場合の調節応答の振る舞いを空間周波数と対応させて検討する.次に,平面画像で奥行き知覚が誘導されやすい視覚刺激を用い,視覚刺激の空間周波数に対応する調節機能を測定,解析する. これらの結果を踏まえて,高精細度画像での奥行き感をもたらす要因を主観評価,生体計測から明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越し金額は,研究計画には記載していないが,本研究テーマにて国際会議で招待講演を受け,今年度春季の国際会議(招待講演)発表旅費として使用予定のため繰り越した. 繰り越し金額は,招待講演の旅費として使用予定. 今年度の配算予定は,当初通り,実験装置の機能向上と予定している学会発表のために使用予定.
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