2013 Fiscal Year Research-status Report
TPOを選ばない個人の頭部伝達関数の取得方法の研究
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25330202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
高根 昭一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90236240)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 頭部伝達関数 / HRTF / ARモデル / 反射 / 測定 / 個人性 |
Research Abstract |
平成25年度は,まず頭部伝達関数(HRTF)の測定系を現有の無響室内に構築し,HRTFの測定を行った.精密な測定を行うためには,測定を行う間の被測定者の動きを小さく抑える必要がある.その一方で,過度に被測定者の動きを抑制する器具などをつけると,それらがHRTFの測定結果に影響を及ぼす可能性がある.これらのことをふまえ,被測定者の頭部の動きを観測できる無線センサをつけ,測定時の被測定者の動きとHRTFの測定結果のばらつきの関係を観察した.その結果,被測定者のmm単位の動きから最大で数dBのばらつきが生じることがわかった.また,使用する音源によっても得られるHRTFは変化し得ることがわかった.この成果については,国内外の学会などで発表した. 次に,反射を含む音場でのHRTFの取得方法については,ARモデルに基づく手法が有効に適用できる条件の絞り込みについて検討している.結果として,どのような場合でも精度は高くならないものの,HRTFとして得られる周波数帯域を絞り込める可能性のあることが明らかとなった. さらに,ある個人の一部の音源位置でのHRTFの測定結果をもとに,同じ個人のあらゆる音源位置でのHRTFを推定する方法について検討した.被測定者の全周方向を対象とすると,音源位置の偏りなく200点程度の音源位置でHRTFを取得すれば,全周方向のHRTFを合成することができることがわかった.ただし,測定に基づいてHRTFを得るとすれば,この条件は現実的ではないため,さらに測定する音源位置の数を削減できるか,水平面など測定の比較的容易な位置に限定できるかどうかを検討中である. 反射を含む音場でのHRTFの取得方法および個人のHRTFの推定手法については,現状の検討結果をまとめて早期に学術論文として公表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究結果の公表には遅れがあるが,それ以外は順調に進展していると評価している. 「概要」の欄に記したとおり,HRTFの測定精度には検討の余地が残されている.しかし,極力そのことに配慮したうえで,HRTFの測定データを蓄積している.また,反射を含む音場でのHRTFの取得方法については,現在まで検討を行ってきた方法だけではHRTFの取得には不十分であるものの,部分的な特性は得られる見通しがあること,また,得られないと考えられる部分についても,新たな方法を適用できる可能性がある.個人のHRTFの推定方法については,音源を任意の位置に配置可能な設備をもつ研究室環境では十分な推定が行えると言える. ただし,TPOを選ばずに個人のHRTFを得ることが本課題の目標であるため,その点では本年度の成果が十分であるとは言えない.これについては,本課題の研究期間を通じてクリアする所存である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は,申請書に記したとおり,タブレット端末を用いたHRTF測定システムを構築する所存である.これについては,既に予備的検討に着手した.反射のある音場で測定した結果に基づいて個人のHRTFを得るためには,平成25年度から検討している取得手法をより高精度化することが必要なため,早期に検討を行う.また,一部の音源位置での測定結果からあらゆる音源位置のHRTFを推定する方法についても,引き続き検討を行う.そのための基盤となるHRTFの測定系については,現状の設備でどの程度の物理的精度が得られるのかを明らかにするとともに,それがHRTFのあらゆる応用において支障を生じさせない程度には高いものとするための検討を行ったうえで,可能な限り多くの被測定者のデータを蓄積する.さらに,構築したタブレット端末を用いたHRTF測定システムについても,その有効性と限界を,考え得る限りの使用場面を想定して評価する.
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