2013 Fiscal Year Research-status Report
符号理論に基づく視覚刺激系列を用いた脳波による高速文字入力システムの開発
Project/Area Number |
25330224
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
深見 忠典 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (70333987)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ブレインコンピュータインターフェイス / 脳波 / P300 / 文字入力 / 国際情報交換(米国) |
Research Abstract |
今年度実施した研究における主要な成果は以下の3点である。 (1)脳波を用いた文字入力において、複数の候補文字から被験者の意図する文字を入力するため、文字の点灯と消灯をそれぞれ1,0とし、異なる文字に割り当てられた符号間の符号間距離を長く、かつ符号長を短くする符号割当てを方法を考案し、脳波計測実験及び解析を通して、文字識別能力について検討した。具体的には、各候補文字の符号パターンに基づき、文字が点灯している時の脳波応答から文字が消灯している時の脳波応答を減じた差分波形において、入力文字特定の鍵となる事象関連電位の一成分であるP300に相当する潜時における電位が最大となる文字を推定文字とした。これと実際の被験者が意図した文字との一致率を正当率として算出したところ、5人の被験者すべてにおいてP300スペラとして広く知られている文字呈示パターンを用いた場合に比べ、正当率の向上と意図した文字が得られるまでの時間の短縮が確認された。ただし、被験者により、その性能向上の程度にばらつきがあり、個人差の影響が大きいことが示唆された。(2)P300成分を一回の文字呈示に対する応答からリアルタイムで抽出するためのパーティクルフィルタを用いた信号処理手法を考案し、性能評価実験を実施した。ここでは、複数応答の加算平均を行うことで評価を行った。その結果、加算平均のみによるP300成分推定に比べ、本フィルタを使用することで推定精度の向上が認められた。(3)ブレインコンピュータインターフェイスにおける脳波計測と解析のリアルタイム処理実現にむけ、計測のためのハードウェアを購入し、制御プログラムを作成した後、正常に動作していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の最終目標は、キーボードによるコンピュータへの文字入力を脳波を用いて行うことである。それを実現するためには、高速性、(文字の推定)精度が最も重要なポイントとなる。本年度は、前者の高速性について文字判別までの時間を短縮するため、より少数の文字呈示回数によるP300成分推定を目指し、パーティクルフィルタを用い一回の文字呈示により得られた応答波形からP300を検出する方法を考案し、従来の加算平均手法に比べ良好な結果を得た。また、後者の精度については、文字点灯時の脳波応答から文字消灯時の脳波応答を減じた差分波形を用いることで、従来から多く報告されている文字点灯時の応答のみを用いた場合に比べて、加算回数が増加するため、P300の背景脳波に対するSN比が改善され、5名の被験者を用いた実験において、すべての被験者で良好な結果を得た。また、計測システムの構築についても、モバイル脳波計を新規に導入し、制御プログラムを作成することにより、脳波計測と解析を並行して行うリアルタイムシステム完成に大きく近づいた。以上より、計測、解析の両面において、研究が順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究がほぼ予定通り進展しているため、当初の予定に沿って研究を進める。次年度は、文字呈示の最適パターンの探索を重点的に行う。文字呈示系列の取りうるパターンは、各文字の点灯と消灯の組み合わせからなるため、候補文字数の増加に伴って急増する。よって、最適パターンを見つけるためには、広い探索空間内で効率よく最適解を探索する必要がある。そこで、本研究では遺伝的アルゴリズムの利用を考えている。ただし、この時単なる符号間距離を最大にする問題としてとらえるのではなく、文字の点灯間隔や周辺文字が同時に点灯したことによる影響を考慮した条件付き最適化問題として考えてゆきたい。こうした最適パラメータを獲得したのち、脳波計測実験および解析を行い、識別精度および所要時間の観点から評価を行う。また、計測システムの構築については、すでにデータの取得まで完成しているため、今後刺激呈示の制御も含めて脳波計測を繰り返し行い、問題点や改善すべき点について洗い出しを行いたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の当初の配分額では、装置購入等において充分でなかったため、前倒し支払い請求を行った。次年度使用額に残額が生じた理由は、学会への参加のための旅費として使用する予定であったが、予定が入ったため参加を見合わせた。 上記の理由で述べたように、本年度内に実現しなかった学会への参加旅費に使用したいと考えている。
|