2014 Fiscal Year Research-status Report
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25330286
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
服部 元信 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40293435)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海馬モデル / エピソード記憶 / 破局的忘却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず,新規な情報のみを効率良く学習することを目指して,入力情報の新規性判定機構を海馬モデルに導入する研究を行った.近年の研究により,自己連想記憶は学習パターンと偽記憶で異なるエネルギープロファイルを有することが明らかになっている.既に提案している海馬モデルのCA3は,自己連想記憶モデルと見なせるため,これを利用することで,入力情報が既知か否かを判定することが可能になると期待できる.しかし,実際に計算機実験を行ったところ,海馬モデルではこの判定機構が上手く機能しないことが多かった.その原因の1つは,海馬モデルの各部位で発火率に基づいた発火ニューロン数の調整を強制的に行なっているためであると考えられる.この問題については生物学的な妥当性も考慮しつつ,引き続き検討をしている. 一方,これまでの研究では形式ニューロンを用いて海馬-大脳皮質のモデル化を行なってきたが,これをスパイキングニューロンに拡張する試みを行った.これにより,時間的な変化を伴うエピソードの情報をより自然に扱うことが可能になる.この研究では,2つのスパイキングニューラルネットワークからなるデュアルネットワークモデルを構築し,擬似パターンを用いた記憶の転写について計算機実験で調査した.その結果,擬似パターンにより,破局的忘却を抑制しつつ新規な情報の追加学習が可能であることが明らかになった.また,擬似パターンに関連した研究として,ニューラルネットワークの構造獲得手法を考案した.通常,ニューラルネットワークの構造は設計者が試行錯誤により決定するが,本手法を用いることで自動的に高性能のネットワークの構築が可能になることが明らかになった.本手法は,大脳皮質ネットワークの構造決定に適用できると考えられる. この他に,睡眠時の海馬-大脳皮質の活動に関する最新の研究成果の調査を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,効率的な学習を実現するために必要であると考えられる,入力情報の新規性判定機構の導入を試みたが,結果としては思わしくなかった.様々な計算機実験を通して,上手く機能しない原因についてはほぼ明らかになっているが,具体的な改善策については検討中である.一方,これまでのモデルをスパイキングニューロンからなる構造に拡張したことで,破局的忘却を抑制しつつより自然にエピソードを扱えるようになる可能性を明らかにした.この研究は,次年度に予定している海馬-大脳皮質モデルの構築を念頭に置き,小規模ではあるが2つのネットワークからなるデュアルネットワーク構造で検証を行っており,当初の計画を若干前倒しにして実施した.さらに,長期記憶を担うネットワークの最適な構造を獲得する手法を考案し,その有効性を明らかにした.また,当初の予定通り,海馬を中心としたエピソード記憶に関する研究成果,並びに,睡眠時の脳活動に関する研究成果について,文献調査の他,神経科学や認知心理学に関する年次集会に参加して情報収集を行った.以上より,ほぼ計画通りに研究を行なっているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では,入力情報の新規性判定機構の導入に難点があることが明らかになった.生理学的な妥当性を考慮しつつ,引き続き,本機構の実装を試みるが,これが困難な場合には,申請時の計画書に記した通り,既に提案している新規性判定の2つのモデルの研究成果を参考にモデルの構築を進めていく.また,睡眠時の脳活動に関する生理学並びに神経心理学的知見の調査を引き続き行うとともに,得られた結果に基づき,海馬と大脳皮質の相互作用による記憶の形成モデルの構築を試みる.
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