2014 Fiscal Year Research-status Report
デフォルトモードネットワークにおけるBMIの応用に向けた脳波特性の研究
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25330293
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
山西 輝也 福井工業大学, 工学部, 教授 (50298387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 健勤 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (00395112)
西村 治彦 兵庫県立大学, その他の研究科, 教授 (40218201)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デフォルトモードネットワーク / 位相同期 / 脳磁界計測 / 脳波 / 複雑ネットワーク / 脳情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来,何もせずぼんやりしている状態では脳もまた休んでいると考えられていたが,近年の実験から安静状態の脳でも複数の領野がそれぞれ同調しながら活動していることが分かった。このような脳活動の中心となっているのが,「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳の複数領野で構成されるネットワークで,最近の知見では,DMNの異常がアルツハイマー病やうつ病などの神経疾患とも関係する報告がある。従って安静時の脳活動,すなわちDMNを研究することにより,脳機能や神経疾患を理解するための新たな手がかりが期待でき,この状態を脳磁計(MEG)で特定し,脳波(EEG)との同時記録から,EEGデータの収集・精査・解析を行い,脳の基底状態におけるEEGの振る舞いの同定を試みている。そこで26年度は 1.EEGの同期特性と複雑ネットワーク解析を行った。ここでは,健常者18名とアルツハイマー病患者16名のEEG (16チャンネル)を使い,位相同期の解析としてPhase Lag Index (PLI) の方法を選び,その値から多重比較検定で差異を見た。結果は,高い周波数帯で健常者とアルツハイマー病患者のPLI値に有意な差があった。さらにPLI値と任意のしきい値から隣接行列を求め,クラスター係数と平均最少経路長を算出すると,α波とβ波で適当なしきい値を決めることで健常者とアルツハイマー病患者との統計的差異を見つけた。 2.安静時のMEGによる計測とための予備実験 (独)情報通信研究機構NICT・未来ICT研究所のMEGを使って,安静時と内向刺激(暗算)の計測を行った。予備実験のため,被験者は1名とした。現在,解析ソフト(BrainStorm)を使い安静時の賦活領域の同定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究計画は,25年度に引き続き,データの収集・精査・解析を行い,脳の基底状態におけるEEGの振る舞いを調べることであった。そこで, 1.脳内デフォルトモードネットワーク状態と,タスク下におけるMEG-EEG の同時記録を(独)情報通信研究機構NICT・未来ICT研究所のMEG とEEGで,脳内デフォルトモードネットワーク状態における脳活動を測定する。被験者は健常な10名ほど(大学生で男女同比)のボランティアとする。 2.脳信号における固有同期解明のための解析手法の開発 頭皮脳波分布同定法の前段階を使い,脳内デフォルトモードネットワークに関与する脳領域のEEG周波数を抽出する。そして,得られた各脳領域のMEGとEEGの周波数から「うなり」の周波数を算出し,脳内デフォルトモードネットワークに固有のゆっくりした同期を再現するか検証し,その根源を解明を目指す と言うものであった。2.については医学的見地から脳信号の位相差による同期解析を行い,計算と結果の可視化,そして統計では多重比較検定ができるようになり,健常者とアルツハイマー病患者のEEGを用い,脳波の位相同期における機能的ネットワークから差異を見つけることができた。現在,共同研究を実施している研究者が持つMEGデータも加えて健常者とアルツハイマー病患者との脳の機能的ネットワークの違いや,位相同期と認知機能との相関について詳細に調べている。 1.においては,研究代表者の所属機関に「ヒトを研究対象とした倫理委員会」が,平成26年9月にようやく設置され,本研究の実験計画が審査に合格し,本実験のための予備実験を行った。今年度の平成27年は予備実験の結果を踏まえ本実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は, 1.平成26年度で計画して実施できなかった,脳内デフォルトモードネットワーク状態とタスク下でのMEGとEEGの計測に関する本実験を行う。 2.健常者とアルツハイマー病患者とのEEGやMEGデータを使った位相解析と多重比較検定をするために平成26年度は解析ソフトを開発した。このソフトを使い,さらに自閉症や統合失調症のEEGとMEGデータから機能的ネットワーク異常を見出し,健常者と脳疾病患者とのネットワークの違いやデフォルトモードの差異を調べる。そして,脳内デフォルトモードにおけるEEGの特徴づけを確立する。 3.新たに分担者として加わってもらった金沢大学子どものこころの発達研究センターの高橋先生は,MEGとNIRSの同時計測を手掛けられてきた。近年,脳障害による四肢の障害患者において,リハビリによる回復をNIRS測定による脳の賦活領域で特定する試みがなされている。そこで,EEGだけでなくNIRSにおける脳内デフォルトモードネットワーク状態の同定を試み,差異の特定からNIRSによる脳障害に関するバイオマーカーの確立を目指す。 を実施する。
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Causes of Carryover |
脳内デフォルトモードネットワーク観測のためのMEG測定とEEG測定における本実験,被験者10名程度が倫理委員会の設置の遅れで実施できず,被験者1名の予備実験だけに終わり,装置の使用料約60万円が保留となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予備実験も終わり,研究者代表者の所属機関の倫理委員会も発足したので,本実験の申請書を提出し本年度中にこれまで実施できなかったMEG測定に取り掛かることができる。同期解析のソフトはすでに完成したので測定後はすぐに解析ができるようになった。また,分担者として金沢大学の精神内科の医師も参加してもらうことになったため,MEG測定やEEG測定での安全面と計測の正確性対策も充実した。
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Research Products
(5 results)