2013 Fiscal Year Research-status Report
危険行動の誘因推定に基づく潜在的危険箇所の抽出:状況判断改善支援への展開
Project/Area Number |
25330303
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 幸代 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10372575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 宏典 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20426258)
丸山 喜久 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70397024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 認知エラー / ヒヤリ・ハット |
Research Abstract |
自転車走行の危険は乗用車と異なり,明らかな交通違反よりも,交通違反とはいえないマナー違反に起因することが多い.乗用車間の交通規則は相互に共通であるが,マナーは,常識と同レベルの共有認識であるため,交通流を構成する人々の間で全く同じというわけではない.ここに潜在的な危険があると考えている.自転車は交通規則で定められない状況が乗用車に比べて多様であるため,マナーに依存して安全が保たれているのが現状である.そこで,具体的に(定量的に)どういう状況がマナー違反に相当するのかを事故を起こすまでの時系列データを用いて形式化することを目的として進めている. 平成25年度は,自転車シミュレータによる20代を中心とする被験者の走行データから「危険運転」と「安全運転」とを分類する目的で,特徴抽出法,および,分類アルゴリズムについて考察,提案した.ここでの「危険/安全」とは,明らかな交通違反,たとえば信号無視,車道と歩道のジグザグ走行,ではなく,交差点での確認不足,状況判断の誤りをさしており,これを「潜在的危険」と呼ぶことにした.走行データは,速度の他に,左右ブレーキのかけ具合,ハンドル角度など運転操作そのものを表す連続量データと,各時点の状況(交差点なのか,平坦な道路,昼なのか夜なのかなど)を表す離散データから構成している.サポートベクタ―マシン等を用いて得られた分類精度は7割程度である.また,当初目標にしていた“想定外”の危険状況は見つからず,想定可能な状況の創発に留まっている. しかし,事故に至るまでの状態遷移をモデル化したことによって,事故に至る状況変化が明確になり,因果関係の把握が容易になった.平成26年度は,運転動作や道路状況に加えて,運転者の年齢層,経験を考慮した運転者のタイプを含めた「特徴抽出」によって潜在的な危険状況に至るまでをモデリングする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目標は,自転車の危険運転の誘因を探るため,その第一歩として,自転車シミュレータによる実験で得られた被験者の操作履歴データから, <操作量,操作量の変化,道路状況,道路状況の変化>とした走行モデルを構築することであった.実際には,このデ事故に至るまでの時系列パターンおよび,状態遷移モデルを導出した.さらに,このモデリングの妥当性を確認するために,事故を起こした被験者のデータによる交叉検定を行ない,モデルの妥当性と合理性を確認している.
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Strategy for Future Research Activity |
ホンダ自転車シミュレータの被験者データが,20代男女に限定されているため,運転者のタイプの相違は抽出できていない.年代の異なる層を収集し,状態空間,行動空間の構成を決める.また,既存の逆強化学習アルゴリズムのうち,相性のよいアルゴリズムを,単純化した問題に適用する.得られた誘因(報酬関数)と行動ルールを被験者による言語化(なぜ,当該操作をしたのか)データと照合し,妥当性を検討する. また,環境側の状況表現について,現状では「見通しの悪い交差点」,「踏切」,「路地」など,道路構造上,明らかに危険な場所を取り上げているが,当課題の当初の目的通り,潜在的な危険環境を抽出できるような運転者の意思決定モデルを提案する. このモデルの妥当性は,ミクロシミュレーションによって評価し,評価に基づいて再び,モデルを洗練化するという過程を繰り返し実施する. モデルの洗練化が十分にできたのち,マルチエージェンシミュレーションを実施して,潜在する危険箇所(ノード)と危険な状況(状態遷移)を表す状態遷移図を作成する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
340,016円の差額は,平成25年度中に予定していた自転車シミュレータによる追加実験を先送りにしたために生じました.当初の計画では平成25年中に自転車シミュレータによる走行データ数を充実させてから,走行特性のモデリングという順序を考えていたが,シミュレータ実験における被験者の “どんなデータを収集すべきなのか” を再考する必要が出てきた.現状でのデータに加えて,モデリングをある程度明確にした後に,実験計画,方向を議論する必要がありました. 平成26年度は,平成25年に構築した自転車運転者の感覚入力は次の2つに大別できる.「自転車の操作パターン(ハンドル角度,スピードなど)」と「走行している環境(交差点,見通し悪い路地,暗い など)」である.被験者も,現在の20代に加えて,若年層(小学生),老年(60才以上)に対して追加実験を実施する.実験において被験者20名~30名を想定していたため,これに対する謝金分を繰り越しています.
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Research Products
(8 results)