2014 Fiscal Year Research-status Report
場の雰囲気を読むコミュニケーションシステム~場をつなぐ食卓と距離を埋める携帯電話
Project/Area Number |
25330320
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
伊藤 淳子 和歌山大学, システム工学部, 助教 (30403364)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コミュニケーション支援 / 遠隔コミュニケーション / チャット / SNS / 対面コミュニケーション / 食卓 / テーブルトップインタフェース / 非言語情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,人にやさしいインタフェースを備えた「場の空気を読める」コミュニケーションシステムの開発を目指す.支援の場として,遠隔コミュニケーションに対しチャットとSNSに,対面コミュニケーションに対し食事の場に着目する.遠隔コミュニケーションでは,人物だけでなく背景までを含めて全体で感情を表現するイラストを用いたチャットシステムと,匿名で第三者と緩やかにつながることのできるSNSを構築した.対面コミュニケーションでは,指で触れるだけで操作ができるテーブルと,テーブルに投影された映像からなるコミュニケーション支援システムを用いて実際に食事をしているシーンを撮影し,分析を行った.その結果,以下の成果を得た. 1.感情を表現した画像を複数使用するチャットシステムの利用により,対話中,対話終了後も,文字だけでは伝達が難しい対話の雰囲気を視覚的に伝達できることが確かめられた. 2.前年度の調査より,特定のアプリケーションを利用した遠隔メッセージのやりとりが盛んになっており,分析対象をどこまで拡大すべきか検討を行う必要があることがわかった.このため,チャットだけではなく,SNSを利用したコミュニケーションについて調査した.匿名の場合,開発したSNSにより交流において大きなストレスを感じることなく,第三者とゆるやかなつながりを継続できることが確かめられた.知人のみを対象にしたSNSにおいても,システムの利用により気を遣わなくてよい交流を達成できた. 3.システムを利用した4人1組の食事の様子をビデオカメラで撮影し,グループ内の役割に着目して視線の向きや食事行動の分析を行った.積極的に対話に参加する被験者2名と人見知りをする被験者2名との間で,食事行動やシステムの利用回数に顕著な差が見られた.システムは特に人見知りをする被験者にとって,話に加わるきっかけに使われていることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,対面,遠隔コミュニケーションのデータを収集し,その内容を調査分析することによって課題点を洗い出した.平成26年度では,その課題点をもとに調査対象を広げるとともに,複数のシステムを構築し,実験を行った. まず,対面コミュニケーションにおいては,被験者の積極性の違いに基づいた分析を行い,食事行動や視線の向き,システムの利用方法について,それぞれ特徴があることが明らかになった. 遠隔コミュニケーションでは,完全に匿名のSNSと,現実で交流のある知人のみを対象にしたSNSをそれぞれ構築し,使用実験を行った.この結果「気を遣わなくてよい」「気軽な」交流を,これらのSNSの利用によって達成できていることが確かめられた.また,画像を用いたチャットシステムにより,対話中・対話終了後も視覚的に対話の雰囲気全体をとらえられることができることが確かめられた.これらの成果の一部は論文として投稿し,採録されるまでに至った. このことから,本課題はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
対面コミュニケーションシステムにおいては,使用者の積極性の違いにおけるデータの分析をさらに複数のグループに対して行い,同様の傾向がどのグループにおいてもみられるか,追加調査する.その上で,使用者に応じて必要な支援の内容について議論し,システムに組み込む. 遠隔コミュニケーションシステムにおいては,使用者が匿名の場合と,使用者が知人のみである場合とで,それぞれ検証を行った.次年度は知人と初対面者が混在している場合や,匿名であっても人物が特定できる場合などにおけるシステムの在り方について検討を行った上でシステムを実装する.また,適用実験から得られたデータにより,使用対象者の違いによる「場の空気を読める」コミュニケーション支援の方法について議論する.
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