2013 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1擬種集団に対する自壊誘導によるエイズ代替療法の基礎研究
Project/Area Number |
25330336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
原田 耕治 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40390504)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HIV-1 / エイズ / 代替治療 / 変異原 / 数理モデル / シミュレーション |
Research Abstract |
現在のエイス治療は、3種以上の抗HIV薬を組み合わせた多剤併用療法 (cART) が中心である。この治療法は、薬物耐性を抑制する点で有効である一方、すでに薬剤に対して耐性を獲得している患者にはかならずしも有効ではない。この研究課題では、cARTと異なる考えに立った、エイズ代替療法の理論的基盤を確立する。ここで検討する代替療法は、HIV-1の"易変異性"を逆手に取り、変異原により更なる変異をウイルスゲノムに誘導し、ウイルスの感染・複製能力を奪うことで、エイズを治療することを目指す。なお、変異原とはゲノムに変異を誘導する化学物質のことをいう。この目的達成のため、今年度は、 HIV-1の感染・複製プロセスをを考慮したHIV-1感染数理モデルを提案し、モデル解析の結果、変異原単独によるエイズ治療には限界があり、増殖率が極めて高い強毒性ウイルスの駆逐は困難であることを数学的に明らかにした。つまり、抑制可能な増殖率に“閾値”があることを確認した。この変異原単独による治療効果の限界を改善するために、変異原と既存の抗HIV薬の併用によるウイルス抑制効果について新たな数理モデルを構築し検討した。その結果、変異原のみでは駆逐が難しいウイルスに対しても抑制効果があることを数学的に明らかにした。具体的には、既存薬との併用により、変異原単独の場合の“閾値”が高くなることを確認した。さらに標的ウイルス分子の異なる既存薬を2剤併用すると、そのウイルス抑制効果は単剤の場合の積となることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異原によるエイズ治療効果を検討するための数理モデルが完成し、その数学的な解析も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
変異原のウイルス抑制効果を検討するために構築した現在の数理モデルは、実際には複雑なウイルスの感染・複製過程を単純化したものであり、エイズ治療効果を定量的に議論するには物足りない。そこで定量的な議論に耐える精緻な数理モデルの構築を目指す。また、変異原によるウイルスゲノムへの突然変異の挿入は、結果的にウイルスタンパク質の機能喪失をもたらし、ひいてはエイズ治療につながると考えられるため、この機能喪失メカニズムを分子シミュレーションにより理解する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子シミュレーション実験用のソフトウェアライセンスを購入するために予算を確保していたが、当該実験の実施が来年度にずれ込んだため。 分子シミュレーション実験用のソフトウェアライセンスを購入する予定である。
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