2014 Fiscal Year Research-status Report
非線形動力学でつなぐ社会性昆虫の個体の挙動と集団特性
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25330346
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
菅原 研 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50313424)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トゲオオハリアリ / リズム / 同期 / 引き込み |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアリの社会性発現メカニズムをボトムアップ的アプローチによって解明することを目的として進めているものである。研究対象としてトゲオオハリアリに見られる集団行動のひとつである「パトロール行動」を取り上げ、個体間の局所的な相互作用と集団としての適応的な振る舞いの関係性について計測とモデル化を行っている。パトロール行動とは、女王アリがワーカーの産卵を抑えるために、コロニー内を徘徊し、各個体と接触する行動であり、集団を統制する重要な機能を持っている。局所的な相互作用のみでマクロな情報であるコロニーサイズに応じたパトロール行動を示す現象の根底には、個体レベルで有するactive-inactiveのリズム周期が深く関わっているとする仮説を改めて整理し直し、その実証過程を通して、社会性発現のメカニズム解明に向けた新たな知見を求める。本年度実施した研究の成果は以下の通りである。 ①女王とワーカーの単接触がもたらす変化の計測:特殊な円形フィールドを作成し、そこに女王アリを単独で放置、ワーカーと1回もしくは2回接触させる。接触の前後でのリズムの変化の計測と解析を行った。 ②パトロール行動に対してワーカーが協力する度合いの計測:女王アリを特殊なケース内に捕獲し、特定の場所に固定した状況をつくる。その周囲にワーカーを放ち、その行動を計測しつつ女王との距離、接触頻度、接触時間を解析することで、パトロール行動に対するワーカーの協力度合いを定量的に評価した。 ③特殊環境における単体の行動計測:単体の行動をモデル化するに当たって、特殊な空間における個体の行動を計測する。今年は円環状通路内における個体の動きを計測し、周期境界条件をもつ擬一次元空間内における個体の振る舞いのモデル化を試みた。また、六角格子状フィールドにおける個体の動きを計測し、擬2次元的な空間における個体の振る舞いのモデル化も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、1)3個体以上の個体集団に見られるリズム行動の同期性、2)特殊空間におけるアリの行動計測と解析、3)パトロール行動の計測と解析、4)自己駆動粒子系としての「行動」の数理モデル化を実施する予定であった。このうち1)と2)の進捗が遅れている。1)が遅れている理由は研究の停滞にあるのではなく、単体レベルでのリズム行動と女王のパトロール行動の関係性に直接踏み込める実験が新たに追加されたことによる。2)については計測データ数に対して、解析が十分に追い付いていないことが原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
計測に関する遅れについては、計測環境を強化し、複数のプロセスを並行することで前期のうちに挽回することを目指している。解析については研究協力者との連携をさらに強化することで挽回することを目指す。
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Research Products
(2 results)