2014 Fiscal Year Research-status Report
TCR-pMHC結合エネルギーの精密計算に基づく胸腺内T細胞選択の原理の解明
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25330349
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鶴井 博理 順天堂大学, 医学部, 助教 (40217386)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | molecular dynamics / TCR-pMHC / MM/PB(GB)SA / homology modeling / binding free energy |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、十分な精度で再現性が得られると思われたTCR-pMHC間結合自由エネルギーであるが、計算を進めるに従い、やはり再現性が得られないことが示された。MM/PB(GB)SAを用いての蛋白質・リガンド(比較的小分子)間の結合関しては現在、かなり広範に用いられているが、当課題が対象としているTCR-pMHCは220残基、420残基程度、溶媒を含め14万原子と系としてはかなり大きく、この手法の適応に、深い洞察が求められると思われた。この結合エネルギー評価に関して高い再現性が得られない理由を検討し、次の事項が問題点として考えられた。 (1)MM/PB(GB)SAでは 非結合性相互作用に関してL-D potential若しくはMorse-potentialを用いているが、このpotentialの精度が十分でない、(2) 溶媒の連続体近似により、結合面の水分子の影響を性格に評価出来ていない、(3) MDはexplicitな水分子、各configurationのサンプリングではimplicitな扱いをしているがこの一貫性の無さが問題、(4) MDを10 nSec程度行っているが、このdurationでは、configurationのサンプリングとして十分で無い、若しくは偏りがある、といった点である。即ち、非結合性の相互作用の近似の精度と、サンプリングの問題である。 これらの問題を解決すべく、種々の点から検討した。前者に関しては、力場による古典的な扱いに問題があると思われ、fragment Molecular Oobital (FMO)法による、評価を行うことを考えている。後者に関しては、極めて本質的問題で有りながら、分子シミュレーションの分野でほとんど検討されておらず、現在、根本的な点まで遡って検討中である。また、TCR-pMHCのペプチドの配列を系統的に変化させ、3D構造のモデリングを行うソフトは、ほぼ完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書には、TCR-pMHC間の結合自由エネルギーが十分な精度・再現性の下に評価できると予想して記載したが、この程度の大きさの系(蛋白が220残基+420残基、溶媒も含め14万原子)では、十分な再現性が得られないでいる。その理由は前述のように、非結合性相互作用の古典的扱いの精度の問題と、configurationのサンプリングの問題である。これらの問題は、MM/PB(GB)SAにおける根源的な問題であり、対象とする系が大きくなることにより、明確となった。前者に関しては、近年、比較的大きな分子にも適用可能となって来ている量子論的扱い、FMOを用いることを考えているが、後者に関しては、MDの分野において十分理論的検討がされておらず、経験論的に計算結果が記載されているのが実情である。
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Strategy for Future Research Activity |
MD+MM/PB(GB)SAの持つ問題点の解消、即ち(1)非結合性相互作用の評価の精密化と、(2)configurationの妥当なサンプリングの確立が目標となる。(1)に関しては、量子化学的計算用ソフト、GAMESSが、FMOの計算が可能となっており、GPGPUによってFMO計算の効率化を行うソフトが開発されており、それを用いることを予定している。FMOによる結合自由エネルギーの値がconfigurationにどのように依存するかが極めて本質的である。この問題に関しては今まで正面切って検討されたことが無い。即ち、通常は結晶構造を局所的にポテンシャルエネルギー最小化を行い、その構造でFMOにより電子状態を決定している。(2)に関しては、サンプリングはMDによっていいと考えている。拡張アンサンブル法は、MDにしてもMCにしても、local minimumにトラップされないようにしてサンプリングの領域を増やす手法であり、foldingのシミュレーションでは実績を上げているが、この手法により得られたサンプルが相空間を十分覆っているということではない。MDでシミュレートする系は散逸系と考えて良いと思われるが、アトラクターと、サンプリングする構造との間に何らかの関係が見いだせないか検討している。
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Causes of Carryover |
予定より低額で購入できたものがあり、その差額が残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DVDメディア等の消耗品に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Commensal Bacteria Regulate Thymic Aire Expression2014
Author(s)
Nakajima A, Negishi N, Tsurui H, Kadowaki-Ohtsuji N, Maeda K, Nanno M, Yamaguchi Y, Shimizu N, Yagita H, Okumura K, Habu S.
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Journal Title
PloS One
Volume: 9
Pages: e105904
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] TNFα but not IL-17 is critical in the pathogenesis of rheumatoid arthritis spontaneously occurring in a unique FcγRIIB-deficient mouse model2014
Author(s)
Okazaki H, Lin Q, Nishikawa K, Ohtsuji N, Tsurui H, Ohtsuji M, Amano H, Tada N, Sudo K, Nishimura H, Shirai T, Hirose S
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Journal Title
Modern Rheumatology
Volume: 24
Pages: 931-938
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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