2015 Fiscal Year Research-status Report
英国の公共図書館政策の構造的変化:利益団体とその役割を中心に
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25330386
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須賀 千絵 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (80310390)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 図書館情報学 / イギリス / 公共図書館 / 利益団体 / 図書館政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.英国における公共図書館の閉館に反対する住民運動,ならびに政府が設置した公共図書館政策に関する助言機関であるタスクフォースの活動の概況を把握するため,新聞,雑誌記事,webサイト等から継続的に情報を収集した。 2.平成27年11月に英国に出張し,住民運動団体The Library Campaignの主催した全国的集会Speak up for Librariesに参加し,各地の住民運動団体,専門職団体,政府側のタスクフォース委員などの関係者の発言や行動を参与観察した。合わせてタスクフォース委員であり,図書館長会の会長であるCiara Eastell氏に,全国的な図書館政策の状況と図書館長会の活動について,個別にインタビューを実施した。 3.地方自治体による運営,地方自治体から委託を受けてボランティアが運営する形態に加え,最近,新しい図書館経営形態として,図書館員・市民が経営組織としての図書館の所有権を獲得する手法が登場した。この新たな経営形態に着目し,新聞,雑誌記事,webサイト等から継続的に情報を収集した。 4.平成27年11月に,従業員・住民所有組織による経営を導入した図書館2館(YorkとSuffork)を訪問し,経営の現状を調査した。合わせてSufforkの館長Alison Wheeler氏と,3例目として導入準備中のDevonの館長Ciara Eastell氏(図書館長会会長)に対し,個別にインタビューを実施した。 5.英国の公共図書館の閉館に反対する住民運動,及び,従業員・住民所有組織による公共図書館経営について,それぞれ訪問記録と論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在進行中の政策動向を研究の対象としているため,現状の把握と,その中から具体的な研究対象と作業課題を見定める作業を並行して進めた。政府の助言機関であるタスクフォースが本格的に活動を始めたこと,従業員・市民所有組織という新しい経営体が出現したことから,これらの新たな動向の把握を優先し,論文のとりまとめにはやや遅れが生じた。しかし,Speak up for Librariesの集会への参加等を通し,政策関係者の発言を実際に聞くことができるなど,データの蓄積を行い,次年度の論文執筆にむけての準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,次の順序で研究を進める。 1.政府側の助言機関であるタスクフォースの活動が本格化するとともに,住民運動の活動も活発化するなど,公共図書館政策をめぐる事態がきわめて流動的である。当初の予定では,最終年度である平成28年度は論文の執筆に専念し,英国出張は行わない予定であった。しかし新しい状況の把握を中心に補足の調査を行う必要が出てきたため,平成28年度にも英国への出張を行うこととした。 2.住民運動の活動について,研究論文の材料とするため,これまでの調査結果をとりまとめた記録を作成する。これらの記録は,専門団体の機関誌等での発表をめざす。 3.従業員・住民所有組織による経営を中心に,これまでの研究成果をとりまとめるための論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定では,最終年度である平成28年度は論文の執筆に専念し,英国出張は行わない予定であった。しかし今後の研究の推進方策において述べたように,政策をめぐる事態がきわめて流動的であるため,平成28年度にも英国出張を行い,新しい状況の把握を中心に補足の調査を行う必要が出てきた。そのための旅費を確保するため,平成27年度の旅費の一部を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年秋に英国出張を行い,繰り越し分の使用額の支出を終了する予定。
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