2015 Fiscal Year Research-status Report
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25330398
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| Research Institution | Yokohama National University |
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Principal Investigator |
竹田 陽子 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (80319011)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | ディープスマート / イノベーション創出 / デジタルストーリーテリング / デザイン思考 / 技術者 / ネットワークの多様性 / 媒介中心性 / 表象使用の多様性 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、仕事の場において職業人がシステム全体の複雑な相関関係を把握して適切な判断を迅速に下す能力であるディープスマートの獲得・継承のメカニズムを解明し、ディープスマートの獲得、継承を支援する情報環境の設計指針を作成することを目的としている。
本年度は、第1に、ディープスマートの獲得のプロセスを直接観察し、獲得プロセスにおける外的表象、内的表象、人工物、情報環境の役割を見るために初年度から実施しているデジタルストーリーテリングを中心とした事業企画ワークショップを拡大し、デザイン思考等さまざまな発想法、プロタイピング法を取り入れた新製品・新規事業のためのイノベーション創出ワークショップを大学内と企業内で実施し、映像記録、参加者のインタビュー、調査票調査を実施した。また、前年度までのデジタルストーリーテリングによるワークショップに関する研究の成果として、査読付き国際公募の共著（”Computational and Cognitive approaches to Narratology" IGI International）に論文1本が採択され、日本認知科学会と社会情報学会で学会報告を実施した。
第2に、前年度までの研究過程で、ネットワークの多様性と新しいアイディアを創出するための外的表象、内的表象の使用形態の間には深い関わりがあることを見出したことに基づき実施した、製造業の技術者を対象にしたイノベーション創出時の発想プロセスと情報探索のコミュニケーションに関する調査票調査のデータを分析し、ネットワークの多様性および媒介中心性、紐帯強度が表象使用の多様性を介してイノベーションのパフォーマンスに有意な影響を与えることを実証分析した。この研究の成果は、電子情報通信学会の研究会で報告をおこない、本年度6月に組織学会で学会発表をおこなう予定である。
第3に、初年度から実施してきた企業の上級管理職、経営者、高度専門職に対するインタビューを継続しておこなった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第1に、ディープスマートの獲得のプロセスを観察するためのイノベーション創出ワークショップの実証は順調に企業内と大学内で実施されており、前年度までに大学内と社会人向けに実施したデジタルストーリーテリングを中心としたワークショップについては、査読付きの論文1編（採択済、2016年度出版予定）、学会発表2報の成果発表が順調におこなわれている。これまでの研究を通して、イノベーションを創出プロセスにおいては、従来指摘されている発散思考と収束思考という枠組みに加えて、親近性基準と新奇性基準という枠組みを加えてすべての証言を循環するように情報環境をデザインすると効果的であるいう知見が生まれた。今後はこのアイディアを発展させて実証研究をおこなっていく予定である。
第2に、製造業技術者のイノベーションに関する調査票調査と、比較研究としての伝統芸能伝承における調査票調査の分析により、ディープスマートを継承するネットワークとディープスマートを獲得するプロセスの関係について新しい知見が得られ、さらに実証を進めている。従来、ネットワークの多様性と成果の間の関係は実証結果が一定しなかったが、この研究により、ネットワークの多様性は表象使用の多様性を介することによってイノベーションの成果に寄与することがわかった。また、媒介中心性が低く、紐帯が強いほど、表象使用の多様性を介して成果が上がる。これらの知見は、常識的とは必ずしもいえず、さらに精緻な実証研究を重ねることによって、イノベーション研究のさまざまな分野に影響を与える発見になる可能性がある。
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| Strategy for Future Research Activity |
第1に、ディープスマートの獲得プロセスを捉えるためのイノベーション創出のワークショップを今後も精力的に実施し、データを収集していく予定である。新奇性基準と親近性基準の枠組みなど、検証するべき仮説がこれまで得られており、実証を行っていく予定である。
第2に、ディープスマートの継承ネットワークと獲得のプロセスの関係については、現在得られているデータをさらに精緻に分析して研究成果として発表していくと同時に、次の調査票調査の企画を開始する予定である。今までの研究では、個人レベルのプロセスとネットワークを調査対象にしたが、媒介中心性の低さが成果につながるという知見から類推されるのは、組織やチームレベルの場の影響力であるため、マルチレベルの分析を可能にする調査設計を行っていく予定である。
第3に、ディープスマートの獲得と継承に関するインデプスインタビューは、同時進行している他の実証研究の焦点が、イノベーション創出の初期にフォーカスされてきたことにより、新しい技術、製品、サービス、ビジネスモデルを生み出す技術者や研究者、企画者、マーケター、アントレプレナー、創業コンサルタント等にインタビュー対象を絞り込んでいき、実証研究間の相乗効果を狙っていく予定である。
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