2013 Fiscal Year Research-status Report
ヨードフルオロカーボン類と硝酸ラジカルの反応過程とヨウ素置換効果の解明
Project/Area Number |
25340003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
中野 幸夫 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50364112)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気化学 / 化学反応速度 |
Research Abstract |
平成25年度では,主にLP-FTIR装置を用いて実験を行うこととした。この実験では,N2O5の平衡反応を利用しNO3を生成させ,まずは,NO3とヨードフルオロカーボン類の反応速度の決定を相対速度法で決定することを目的に実験を行った。しかしながら,実際に測定を行ってみると反応物と反応生成物の赤外吸収バンドが重なり合っているなどの理由で,吸収スペクトルを単離することができず,この反応に対しては相対速度法での反応速度定数の決定が非常に困難であることが判明した。そこで,相対速度法ではなく,LP-FTIR装置を用いた新たな速度定数決定法を開発することとした。試行錯誤の結果,LP-FTIR装置を用いて反応物と生成物の同時多成分濃度解析と化学反応シミュレーションを組み合わせた速度定数決定法を確立し,その測定法のテストとして,NO3と単環式モノテルペンの一種であるリモネントの反応の反応性数の測定にこの新たな速度定数決定法を適用しその妥当性の検討をすることとした。ここで,NO3とリモネンの反応を選んだ理由は,この反応は従来までの相対速度法を用いての測定も行えるため,新たな速度定数決定法の妥当性の検証ができるとともに,この反応自体も実は速度定数がしっかりわかってないため,それを決定することは大気環境科学的な重要性があったからである。結果として,新たな速度定数決定法を用いて決定したNO3とリモネンの反応速度定数は,相対速度法により決定したものと等しく,その測定法の妥当性を確認することができた。このことより,このLP-FTIR装置を用いた同時多成分濃度解析と化学反応シミュレーションを組み合わせた速度定数決定法を用いて,ヨードフルオロカーボン類とNO3の反応速度定数の測定することができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」にも書いたが,測定目的の反応が研究計画当初で考えていた測定法では測定することが困難であることが実際に測定してみて初めてわかったため,当初の予定になかった新たな測定法の開発とその測定法の妥当性の検証を行う必要が出てきた。本年度はそれに関わる作業を主に行うこととなったため,目的の反応を測定に関しては,あまり順調な進捗したとはいえないかもしれないが,今年度に開発したLP-FTIR装置を用いた同時多成分濃度解析と化学反応シミュレーションを組み合わせた速度定数決定法は,かなりいろんな反応に対して応用が可能となるような測定法であるので,今後の研究全体を進めるにあたり非常にプラスとなる研究成果が得られたともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では,平成25年度に開発したLP-FTIR装置を用いた同時多成分濃度解析と化学反応シミュレーションを組み合わせた速度定数決定法を用いてヨードフルオロカーボン類とNO3の反応速度定数の測定を試みる。また,LP-FTIR装置を用い反応生成物の解析・同定も行い,それらのデータからの反応機構の推定も行う。また、本研究では2つの測定装置を用いてヨードフルオロカーボン類とNO3の反応の測定を行うことを目的としているので、もう一方の装置である時間分解型キャビティーリングダウン分光法装置(TR-CRDS装置)法を用いたヨードフルオロカーボン類とNO3の反応速度定数の測定も始める。 平成27年度では,LP-FTIR装置とTR-CRDS装置の両測定装置を用いた反応測定のうち前年度までに終了することのできなかった測定を引き続き行いながら,研究の最終的な取りまとめを行う。以上の結果が揃い次第,ヨードフルオロカーボン類とNO3との反応における反応性に対するヨードフルオロカーボン類へのヨウ素置換の特異的な効果のメカニズムの系統的な解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費に関しては当初の計画通りに遂行できたのが、物品の価格変動の影響など次年度に使用する研究費は数百円単位で生じた。 次年度繰越金は数百円なので当初計画に影響はない。
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