2014 Fiscal Year Research-status Report
ヨードフルオロカーボン類と硝酸ラジカルの反応過程とヨウ素置換効果の解明
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25340003
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
中野 幸夫 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50364112)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気化学 / 反応速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では,時間分解型キャビティーリングダウン分光法装置(TR-CRDS装置)を用いてヨードフルオロカーボン類のうちジフルオロヨードメタン(CF2HI)と1,1,1-トリフルオロ-4-ヨードブタン(CF3(CH2)2CH2I)に対して,硝酸ラジカル(NO3)との反応の測定と反応速度定数の決定を行った。実験では五酸化二窒素(N2O5)とヨードフルオロカーボンを反応管に流入しておき,そこに光分解光として266 nmのナノ秒パルスレーザーを照射して,N2O5の光分解によりNO3を瞬時に生成させ,その後のNO3濃度の時間変化をCRDS法により測定した。NO3はヨードフルオロカーボンと反応するため,反応管内に存在するヨードフルオロカーボンの濃度により,NO3の濃度の減衰が変化するため,それを解析することにより反応速度定数を決定することができる。そのような測定をCF2HIとCF3(CH2)2CH2Iに対して行った。結果として,CF2HI + NO3とCF3(CH2)2CH2I + NO3反応速度をそれぞれ(0.9±0.3)×10-13 cm3 molecule-1 s-1と(1.1±0.1)×10-13 cm3 molecule-1 s-1であると決定することができた。この速度定数を用いることにより,CF2HIとCF3CH2CH2CH2Iが大気中に放出された際,それぞれ13時間と11時間でNO3ラジカルにより大気中より除去されることがわかった。一般的に地表で放出された化学物質が成層圏に到着するまでには1カ月程度かかると言われている。このことより,CF2HIとCF3(CH2)2CH2Iは大気中に放出しても,成層圏オゾンの破壊に繋がらないことを本研究で明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,本研究の主要な目的であるNO3との反応速度定数の決定について,CF2HIとCF3(CH2)2CH2Iの2つのヨードフルオロカーボンに対して速度定数の決定を行うことができた。これらの速度定数はこれまでに報告されておらず,これらのヨードフルオロカーボンの大気へ与える影響を見積もるためには,この速度定数が必要であり,本研究により初めてCF2HIとCF3(CH2)2CH2Iが成層圏オゾン破壊に与える影響を見積もれた。この点に関して考えると研究は非常に良く進展していると考えられる。ただ,当初の計画で考えていた長光路ガスセルフーリエ変換赤外分光法装置(LP-FTIR装置)を用い反応生成物の解析・同定に関してはあまり進展していないため,上記の点の進展度合いも合わせて考えると総合的には順調に進んでいると状態であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では,引き続き他のヨードフルオロカーボン類に対しても,TR-CRDS装置を用いてNO3との反応速度定数の測定を行う。また,LP-FTIR装置を用い反応生成物の解析・同定も行い,それらのデータからの反応機構の推定も行う。以上の結果が揃い次第,ヨードフルオロカーボン類とNO3との反応における反応性に対するヨードフルオロカーボン類へのヨウ素置換の特異的な効果のメカニズムの系統的な解明を試みる。
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Causes of Carryover |
今年度の研究費に関しては当初の計画通りに遂行できたのが,物品の価格変動の影響など次年度に使用する研究費として千円強の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越金は千円強なので当初計画に影響はない。
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