2015 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷を介さないATM依存的な細胞ストレス応答と発がん抑制機構の解析
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25340028
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 昌彦 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70285633)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 代謝ストレス / mTORC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、mTORC1活性の高い悪性マウスグリオーマ細胞に効果的に働く薬剤のスクリーニングによって得られた候補薬剤を用い、mTORC1を活性化した場合のメタボローム解析によって得られた結果に基づき、薬剤のグリオーマの幹細胞性への影響を解析した。 スクリーニングによって得られた薬剤には、細胞内のATP量を下げる効果のあるものが高頻度に含まれ、さらに、これらはミトコンドリア機能を傷害する作用を示した。細胞内ATP量を下げる薬剤は、mTORC1活性の高いグリオーマ細胞において、効果的に幹細胞性の指標の一つであるスフィア形成能を低下させた。特に効果の高い薬剤についてヒトグリオーマ細胞を用いて解析し、AMPKのリン酸化の上昇や幹細胞性マーカーの発現減少を誘導することを明らかにした。 本研究では、酸化・代謝ストレスによるATMを介した細胞応答を解析し、親電子性代謝産物15d-PGJ2は、ATMを活性化すると同時に、ATM非依存的にmTORC1を活性化すること、電子伝達系を阻害するメトホルミンは、ATM依存的にAMPKをリン酸化する可能性を明らかにした。これらのことから、酸素やある種の酸化ストレスによって活性化したmTORC1のATMによる抑制、また、ミトコンドリアの傷害を介したATM-AMPKによるmTORC1の抑制という機構が示唆された。mTORC1の活性化がグリオーマの悪性度を促進することをマウスモデルで明らかにした結果とmTORC1活性が高い悪性グリオーマに効果的な薬剤のスクリーニングによって得られた候補薬剤の作用解析の結果を合わせると、ATMはDNA損傷に対する応答反応とは異なる機構により、mTORC1の抑制を介してがん化の抑制に働き、この機構はmTORC1活性の高い悪性グリオーマなどの治療標的として利用できる可能性を示した。
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