2014 Fiscal Year Research-status Report
ラドン222壊変生成物による肺線量計算ソフトウェアの開発
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25340029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石榑 信人 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70159713)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラドン / 線量評価 / 呼吸気道モデル / エアロゾルパラメータ / コンピューターコード / 感度解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境によって幅広く変動する様々なエアロゾルパラメータや、呼吸する個人によって変動する様々な解剖学的・呼吸生理学的パラメータに対して、ラドン222壊変生成物による肺の線量を呼吸気道モデルにより簡便に計算できるソフトウェアの開発を目的としている。 国際放射線防護委員会の推奨する呼吸気道モデルは1994年に最初に公開された。25年度までに、このモデルがその後どのように改訂されたかを追跡調査して最新の呼吸気道モデルを入手し、このモデルを用いてエアロゾルパラメータや呼吸生理学的パラメータを任意に変更しながら線量を計算することのできるコンピューターコードを一通り試作した。平成26年度では、気道に沈着した粒子の一部分が気道組織へ結合することにより、そのクリアランスの特性が変化するという効果をこのコード組み込むなどの修正を施した。その上で、時間的空間的に変動し得るエアロゾルパラメータによる感度解析を実施し、肺の線量の変動の幅を評価した。得られた結果の重要なポイントは次のようにまとめられる。(1)空気中に浮遊するラドン222壊変生成物のうち、エアロゾルに付着していない粒子径1ナノメートル程度の成分の割合(非付着成分比)の線量換算係数への影響は大きく、非付着成分比の1%の増加は線量を数%増加させることが示された。(2) 粒子径数十ナノメートル程度の凝結核形成モードの線量に対する粒子径依存性については負の相関が示された。(3) 粒子径数百ナノメートル程度の蓄積モードの線量に対する粒子径依存性は小さいことが示された。以上より、それぞれの環境に固有の線量換算係数を求めるためには、空気の清浄度と逆の相関のある非付着成分比の評価が特に重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、最新の呼吸気道モデルを調査し、これをコンピューターコードに組み込むことができた。また、このコードにより、時間的空間的に変動し得るエアロゾルパラメータによる感度解析が可能であることが示され、肺の線量の評価にとって重要なパラメータを抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに進める。 開発したコードを用い、日本人に特有の解剖学的、生理学的パラメータ、生活習慣、日本の生活環境におけるラドンガス濃度や壊変生成物のエアロゾルパラメータなどを適用し、日本人公衆の各年齢層のラドン壊変生成物による年間実効線量を評価する。さらに、作業環境において線量低減対策がほぼ常に正当化され得るレベルとして国際的に認められている年間実効線量10ミリシーベルトに相当する屋内作業場内のラドン濃度を評価する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、26年度に予定した海外での学会出席を先送りしたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度分として請求した助成金と合わせた額の使用計画は次のとおりである。 物品費:450,000円、旅費:450,000円、その他:73,178円
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