2013 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質相互作用による細胞内塩基除去修復の制御機構
Project/Area Number |
25340036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
久保 喜平 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40117619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 重雄 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10280067)
山本 亮平 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (20457998)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 塩基除去修復 / 脱塩基部位 / 修復複合体 / DNA修復制御 / グリコシラーゼ |
Research Abstract |
本研究は、メチルプリングリコシラーゼ(Mpg)によって開始される塩基除去修復(BER)の制御機構の解明を目的としている。マウス胎児線維芽細胞(MEF)のPolβ欠損株(Polβ-KO)中のBERを野生株(WT)のアルキル化剤 (MMS)処理直後の生存率を検討した結果、WTとPolβ-KOの対数増殖(log)期とG0期におけるED50の比はほぼ変わらず、G0期においてもPolβ依存性BERが重要であった。log期のWTとPolβ-KO MEFでは、Polβ-KOにおけるAPE1のmRNA発現はWTの50%以下に抑制されていたが、G0期では差が見られなかった。他のBERタンパク質の発現はWTとPolβ-KOに差は見られず、log期ではPolβ-KO内MpgとApexは著しく減少していた。Polβ-KO中のAPEの減少は、mRNAの発現低下と相関するが、MPGでは分解の更新が示唆される。2から5mM Mg2+存在下で、PolβによるApex活性増強効果が観察された。増強効果は、Apexのturnover rateが最大となる10mM以上のMg2+下では消失したので、生理的Mg2+濃度でのPolβによるApexのturnover増加が示唆された。Polβ-KO /Apex-KD MEFはApex-KD MEFに比べて、高いMMS感受性を示した。免疫共沈法のためにマウスMEFを用いてFLAG-MPG発現系を構築して、MEF抽出液との共沈実験条件を検討している。ヒト精製組換えGST-MPG用いたHeLa細胞抽出液のプルダウン産物と、GST-MPG発現HeLa細胞抽出液のプルダウン産物について質量分析法によりGAPDHをはじめ複数のタンパク質が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材料となる細胞として、ヒト子宮頚癌由来ヒトHeLa細胞およびマウス胎児線維芽細胞(MEF)を選択し、既に構築していたヒトGST-MPGの大腸菌発現系に加えて、HeLa細胞のGST-MPG発現系を作出した。精製GST-MPG によるHeLa細胞抽出液のプルダウン産物の質量分析装置による同定が行われた。MMS処理時に産物が増加したものの中で、GAPDHが注目される。BER関連タンパク質の相互作用を検討するに当たっては、特異性の高い抗体の存在が不可欠である。市販の抗体の性能試験を行ったが、特に抗Mpgについては、満足できる性能を示すものが得られなかったので、組換えMpgタンパク質を抗原として家兎抗Mpg抗体の作出を行った。得られた抗体の特異性および力価が低かったため、再度、作出を試みている。また、FLAGタグ付きMpgを導入したMEF株を作出し、FLAG-Mpgの大腸菌発現系を構築した。今後、抗Tag抗体による共沈法およびプルダウン法を補完システムとして利用する予定である。 これまで知られていなかった生理的濃度のMg2+存在下でみられた、POLβによるAPE1活性の増強により、MPG-APE1-POLβの3者間の相互作用が明らかとなった。前の2酵素が、いずれもその産物との親和性による活性の抑制が見られるので、細胞内での「各ステップの産物の受け渡し」仮説が、より可能性の高いものとなった。また、MEFを用いた実験系では、MMS処理後の各タンパク質の発現動態を解析することにより、多くの情報が得られた。それらには、Polβ細胞でのApex mRNAおよびタンパク質の大幅な発現低下、MpgおよびPCNAタンパク質の減少が観察された。さらに、増殖停止細胞においてもMMS損傷修復におけるPolβの寄与が対数増殖期の細胞におけるのと変わらないことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の解明のために、今後は、1)ノックダウン細胞および欠損細胞を用いた研究結果を踏まえて、特にMMSによる損傷発生初期に機能する核内制御因子とMPGの相互作用について研究を進める。また、Fen-1ノックダウン株を作出し、もうひとつBER主要経路であるFen-1依存性経路の役割を明らかにする。2)新たにHeLa細胞を用いたタグ付きMPG強制発現系を作製して、これを用いてMPGと相互作用をする核内因子を、プルダウン法および免疫沈降法により分離、同定する。3)MPGのin vitroアセチル化処理およびリン酸化処理を行い、これによるS期細胞抽出物との複合体形成に及ぼす影響を検討する。4)MPGノックダウンMEFを作成し、MPG量の低下のMMS処理後の修復複合体形成への影響を明らかにする。5)MBD1およびHR23ノックダウン細胞を作出する。これらの細胞のG1期およびS期におけるMMS処理による複合体形成動態を調べる。6)MPG複合体領域に集簇するタンパク因子を解析する。7)薬剤処理後に、MPG複合体領域に集簇するタンパク因子の解析を行う。8)DNA損傷導入時のp53、APE1やpolβタンパク量レベルの上昇と、MPGレベルの連動性および複合体形成におけるUSP7S、UBR3およびUSP47それぞれのノックダウンの影響についても検討する。9)メチル損傷のBERの初期過程に関わる細胞内諸因子について明らかにし、MPGの抑制的制御とBER開始に関わるタンパク因子による統合的制御機構について総括する。
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Research Products
(4 results)