2014 Fiscal Year Research-status Report
メダカ胸腺を指標にした放射線障害の定量化システムの確立
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25340043
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
丸山 耕一 独立行政法人放射線医学総合研究所, 福島復興支援本部, 主任研究員 (70349033)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小核試験 / メダカ / 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境評価生物であるメダカの胸腺をターゲットにして、臓器レベル、細胞レベルからの異なる2種の放射線影響定量システムを立ち上げ、包括的にメダカに放射線影響が現れるしきい値を検証する事である。 今年度の目標は、メダカ胸腺をターゲットとして、X線単発照射による小核出現率の上昇する時期の特定としきい値の推定、また放医研ガンマ線照射施設・第1ガンマ線棟でのメダカ長期照射飼育システムの構築であった。小核試験法については、まだ結論を得るまでのデータは得ていないが、ある程度の傾向は見えており、今後サンプル数を増やす事でデータを確定させたい。ガンマ線長期照射飼育システムの確立については、手続きや利用者間での調整等に時間がかかってしまい遅れているが、現在問題はほぼ解決しており、研究に着手している。 研究成果の発表では、小型魚類研究会で、「Radiation effects on medaka around Fukushima Daiichi nuclear power plant」というタイトルでポスター発表を行った。実際に福島に生息しているメダカに放射線影響がでているかどうかの内容で、本課題と密接に関わっている。多くの聴衆が興味を持って聞きに来てくれた。放射線による胸腺萎縮の論文については、今年度、発表ができなかったが、出来るだけ早く投稿したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の目標は、メダカ胸腺をターゲットとして、X線単発照射による小核出現率の上昇する時期の特定としきい値の推定、また放医研ガンマ線照射施設・第1ガンマ線棟でのメダカ長期照射飼育システムの構築であった。 これまでの文献で、放射線照射約24時間後にメダカエラ細胞では小核の出現率が最大になることが分かっている。そこで、Rag1-egfpメダカをX線10Gy照射後、12, 24, 48, 72時間後に胸腺を摘出し、小核試験法で小核出現率が上昇する時間を調べた。結果、エラ細胞同様に24時間後に最も出現する傾向が見られた。また、X線0.1-10Gy照射後24時間の小核出現頻度から、メダカ胸腺の小核が出現し始めるしきい値を調べた。十分に個体数が取れなかった群や照射した個体から十分な細胞が取れず失敗した個体もあり、まだ結論は出ていない、再度いくつかの群について再試を行う事で、論文作成上の一つのデータとしてまとめたい。 今年度、放医研施設の第1ガンマ棟でメダカの長期照射飼育を実施する予定であったが2つの理由で遅延した。一つは、遺伝子組み換え等の施設承認であり、これまで未承認の施設を新たに承認させるに当たり、様々な制約と手続きが必要となり、また人事異動で担当が交代するなど想定外の事があり遅延することになった。組み換えの承認は平成26年末に無事認可された。もう一つは、福島原発事故後、ガンマ線照射施設の利用者が急増し、十分なスペースと希望の線量率を確保するのが難しくなってきた点である。利用者と調整を行うことで、低線量率と高線量率とを別々に実験を行うということで実験は可能という事になった。現在、密封容器を用いてメダカの飼育と線量評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
メダカ胸腺細胞におけるX線単発照射での小核出現率の上昇する時期としきい値の推定については、これまでの系でさらなる追加、追試の実験を行い、結論が出たところで実験は終了とする。 ガンマ線長期照射については、条件設定の飼育等を開始し、線量率評価等を行っている。今後問題がなく飼育可能ならば、Rag1-egfpを飼育し、胸腺萎縮と小核のデータを集め、X線での萎縮のデータと比較、検討をする。 今年度が最終年度なので、データの整理、まとめを行い、論文として発表出来るよう努力する。
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Causes of Carryover |
謝金で業務補助員を一人雇用しているが、扶養の子供がまだ小さく勤務時間に制限があり、また、病気、幼稚園の行事等で良く休むため、いくらかの残金が計上された。また、研究申請当時、動物飼育施設を使用するにあたっては課金制度が導入される予定であったが、現在、机上で経費の算出は行われているものの、実際の課金額の請求はされなかったため、残金が計上された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度計上しているのは、消耗品費、旅費交通費、諸謝金である。消耗品は、魚類飼育関連、標本作製関連、試薬などであるが、在庫がなくなり次第、随時注文する予定である。旅費交通費は、小型魚類研究会で発表するために使用する予定で、研究会は平成27年9月に大阪大学で開催される予定である。諸謝金は当研究費で現在雇用している業務補助員の給与として毎月使用される。仕事内容は、動物飼育・管理、データ解析などである。その他は、主に論文作成・出版に係る経費であるが、英文校正料、投稿論文掲載料が必要になった時に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)