2014 Fiscal Year Research-status Report
有害重金属の毒性発現に関与する細胞内タンパク凝集体の研究
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25340051
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
高田 耕司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30179452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚志 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80350388)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有害重金属 / タンパク凝集体 / カドミウム / ユビキチン化タンパク質 / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、腎近位尿細管上皮HK-2細胞を用いて得た昨年度の実験結果を他のヒト由来株化細胞で検証するため、神経芽細胞腫由来SH-SY5Y細胞および肝細胞癌由来FLC-4細胞を用い、塩化カドミウムおよびメチル水銀曝露に伴うタンパク凝集体の量的・質的変化を分析した。その結果、両細胞においてもHK-2細胞の場合と同様に半致死濃度のカドミウム曝露が難溶性ポリユビキチン化タンパク質を増加させることを見出した。また、この過程でポリユビキチン鎖含有凝集体が細胞内に複数出現することを蛍光標識抗体を用いた免疫細胞化学の手法で確認した。これらの結果から、有害重金属の毒性発現に関与するタンパク凝集体の供給源として、カドミウム曝露実験系を採用することに決定した。また、細胞の種類に関しては、大量培養時における細胞の形状の安定性と効率的なタンパク凝集体の回収の観点からHK-2細胞を選択し、最適化した条件で凝集体含有抽出液を調製した。その後、凝集体成分の抗体アフィニティー分離に着手したが、抗ポリユビキチン鎖FK2抗体のストックが劣化したため、同抗体を産生するハイブリドーマを用いた実験を追加し、培養上清およびマウスの腹水から十分量の精製抗体を分画した。免疫沈降実験の結果、精製抗体は特異的にポリユビキチン化タンパク質と結合することが確認された。LC-MS/MSを用いた予備実験においては、細胞抽出液等を用いて効率的な網羅的同定の条件を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度も報告したように、平成25年4月から研究代表者は東京慈恵会医科大学国領校の自然科学教室生物学研究室に赴任した。この研究室は過去の研究活動において植物の生殖細胞を対象とした微細形態学の分野に注力してきたため、研究設備・実験機器に偏りがあり、本研究を実施する上で必要不可欠な細胞培養やタンパク分析用の機器類を新たに調達するなど広範な環境づくりが求められた。そのため、昨年度は細胞培養室と一般実験室を整備し、数名の人員が培養細胞を用いた生化学・分子生物学系の実験を実施できる環境づくりを継続している。今年度は動物飼育室を整備するとともに倒立型蛍光顕微鏡を入手し、凝集体の可視化を可能とした。また、性能が劣化したマイクロプレートリーダーを更新してELISA等の定量実験を安定して実施できるようにした。現在までの達成度において若干の遅延が生じているのは、こうした研究環境の整備に時間を要してきたためである。引き続き効率的な実験を心掛け、研究推進に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討において、有害重金属の毒性発現に関与するタンパク凝集体の供給源として、腎近位尿細管上皮HK-2細胞を用いたカドミウム曝露実験系が他の株化細胞の系よりも優れることを確認した。また、今後の単離精製の実験に必要なFK2抗体の大量調製に成功した。今後の研究は以下の計画に沿って進める。HK-2細胞を70 μM前後の半致死的濃度の塩化カドミウムに24~48時間曝露してこれを試料とする。タンパク凝集体はTriton X-100含有Tris-HCl緩衝液で抽出した際の残渣から回収し、FK2抗体を用いた蛍光免疫染色で確認後、SDSを用いて可溶化抽出し、特異的ELISA(Eur J Biochem 233:42-47,1995)で定量する。凝集体成分の精製・分析では、SDSが妨害物質となるため、cycloamylose等を用いた独自の方法(Anal Biochem 377:77-82, 2008)で可溶化成分からSDSを除き、その後、FK2抗体カラムによる免疫アフィニティー分離で凝集体の主成分を精製する。その際、凝集体と相互作用するタンパク質群も捕集されるため、段階的な溶出法によって相互作用成分と凝集体成分を分離する。トリプシン等による精製標品の酵素消化では、再不溶化による損失を防ぐため、特定アミノ酸や界面活性剤を添加する。構成成分の同定は、早稲田大学のLC-MS/MS(NanoFrontier eLD)を利用する。ユビキチン鎖由来ペプチ ドが同定を妨げる場合は、各種ユビキチン抗体を用いた免疫吸収を行う。MS/MSによって得られたデータは検索エンジンで自動処理しタンパクの種類を同定する。また、信号強度に基づいて内部標準に対する比較定量を行い各タンパク質の含有量比を求める。
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Causes of Carryover |
昨年度にも報告したように平成25年4月から研究代表者は、東京慈恵会医科大学国領校の自然科学教室生物学研究室に赴任した。この研究室は植物細胞を対象とした微細形態学の分野に注力してきたため、研究設備・実験機器に偏りがあり、本研究を実施する上で必要不可欠な細胞培養やタンパク分析用の機器類を新たに調達するなど広範な環境づくりが求められた。そのため、昨年度から細胞培養室と一般実験室を整備し、数名の人員が培養細胞を用いた生化学・分子生物学系の実験を実施できる環境づくりを継続中である。今年度は動物飼育室を整備するとともに倒立型蛍光顕微鏡を入手し、凝集体の可視化を可能とした。また、性能が劣化したマイクロプレートリーダーを更新してELISA等の定量実験を安定して実施できるようにした。次年度使用額が生じたのは、このような背景から計画の一部を次年度に移行させたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、次の実験に使用する物品費を購入するために使用する。24~48時間カドミウムに曝露したHK-2細胞をTriton X-100含有Tris-HCl緩衝液で抽出し、その残渣からタンパク凝集体を回収する。その際、FK2抗体を用いた蛍光免疫染色で凝集体の性状を分析する。次いで凝集体をSDSで可溶化抽出後、cycloamylose等を用いた独自の手法(Anal Biochem 37:77-82, 2008)で再不溶化を抑制しながらSDSを除去する。その後、FK2抗体カラムを用いた免疫アフィニティー分離で凝集体の主成分である難溶性ユビキチン化タンパク質を精製する。 その際、このカラムには凝集体と相互作用するタンパク群も捕集されるため、段階的な溶出法での分画を試みる。精製標品は、トリプシン等を用いて前処理し、LC-MS/MS分析に供する。
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Research Products
(3 results)